「どこかシュールでクセになる殺し屋アクション」最強殺し屋伝説国岡 完全版 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
どこかシュールでクセになる殺し屋アクション
阪元監督の『ベイビーわるきゅーれ』を以前鑑賞した時に、多くの映画レビュアーさんが「こっちもおもしろい」と言っていたのが本作でした。
ざっくりと「めちゃくちゃ強い殺し屋の国岡を描いた作品」ということだけ知っている状態での鑑賞でした。
結論ですが、低予算B級映画っぽいチープな絵面が多少気になりましたが、それを含めて楽しめるアクション映画になっていました。全体的に予算があまり掛かってない安っぽい絵面なのに演者さんたちがちゃんと「動ける人たち」だったので、アクションシーンのアクロバティックさが半端ないんですよね。映像がチープだからこそ、CGや画角で誤魔化さない純粋な役者さんの身体能力によるアクションが映えていたように感じます。
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『ベイビーわるきゅーれ』の制作に取り掛かっていた映画監督の阪元は、若手実力派の殺し屋である国岡(伊能昌幸)に密着取材を行う。密着取材の中で人を殺しているとは思えないほど淡々と依頼をこなしていく国岡だったが、繁忙期に下請けの業務ミスや連絡不行き届きなどを原因に、依頼人から恨みを買うことになってしまい……。
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本作はドキュメンタリー風の映画である「フェイクドキュメンタリー」とか「モキュメンタリー」と言われるタイプの作品です。『パラノーマルアクティビティ』とかが有名ですが、低予算映画でよく用いられる手法ですが、これが結構有効に働いていたように感じます。絵面が多少チープでも、「ドキュメンタリーだから」と違和感なく見ることができるからですね。
阪元監督の『ベイビーわるきゅーれ』が凄く面白かったので、監督の別の作品が見てみたいと思い、本作を鑑賞しました。ベイビーわるきゅーれも脱力殺し屋アクション映画でしたが、本作の脱力感はベイビーわるきゅーれ以上でした。国岡という青年が良い意味でも悪い意味でもその辺にいそうな若者で、仕事も軽口言いながら淡々とこなすので人を殺しているということを忘れてしまいそうなほどです。殺しをした現場も、周りから子供の声が聞こえるような公園だったり普通に住宅街の道路のど真ん中だったり、日常に見かけるような場所でしれっと殺人が行われているという、日常の中に実はある非日常というアンマッチ感がたまらなく面白いです。
批判的なレビューをしている人たちは口をそろえて「アクションシーンが安っぽい」と言っています。私もそれには同意します。特に銃撃戦は合成なのが見え見えなマズルフラッシュと後付けなのが見え見えの銃声が実に安っぽくて半分ギャグシーンです。でも、本作の魅力はそんな安っぽい映像の中でも際立ってカッコいい肉体的なアクションです。阪元監督のベイビーわるきゅーれでもそうでしたが、しっかりアクション演技が出来る俳優さんをキャスティングしているので、さっきのイマイチな銃撃戦が嘘のようにカッコいいバトルアクションが見られるんですよね。国岡役の伊能さんもそうですし、敵役の俳優さん達もめちゃくちゃ動ける俳優さんで、迫力があってかっこよかったです。
ただ、ラストの格闘シーンは小学生の喧嘩みたいな連続パンチがギャグっぽくてカッコ悪くて、ちょっと残念でした。あれってプロレスで言うところのチョップの応酬を表現したかったのかもしれませんが、さっきまでバク宙みたいなアクロバティックなアクションをしていた人たちが小学生みたいなアクションをし始めるのは違和感がありましたね。
アクションシーンについて批判的な意見があるのは理解できます。ただ私は、この作品が批判されていたら擁護したくなるくらいにはこの作品が気に入りました。個人的にはお気に入りの作品になりました。面白かったです。おススメです!!
