「元高木さん、エピソード0」劇場版 からかい上手の高木さん Warlusさんの映画レビュー(感想・評価)
元高木さん、エピソード0
アニメ3期の11話、12話で、原作から決定的に枝分かれしたと感じたので、その先にある劇場版はさらに原作との距離、Y字が開いていく作風になるかもしれないと思っていました。
自分は原作派ですが、アニメオリジナル否定派ではないので、不安もあり期待もあり、って感じでしたね。
中学3年最後の夏ですね。
縁あって集った2人、3人、または集団にとって別れを意識させられてしまう時期で、中学生くらいだと永遠に感じていたものが失われるという揺らぎがそれぞれにありました。
ミナちゃんは背丈が示す通り一番幼いキャラだから、不安も人一倍感じていました。
ユカリは背が高いせいか?やけに達観している。良くも悪くもいつも色々諦めている気がする(笑)
サナエは何にも思い入れがなさそうで割り切りもよさそうだけど、2人のことが好き。走ることにもこだわりがある。
逆に、目的以外には目もくれない。
実は最も現実的にしっかりしている気がする。ユカリは実はそうでもないので(笑)
ああいうキャラだけに、好きじゃないと一緒にはいないですよね。
3人で船に手を振っているシーンはすごく良かった。
その行為自体には何の意味があるのか分からないような分かるようなシーンで、ちゃんと見送りをすることで誰かと自分の今を大事にできるのかな、とか、ちゃんと誰か・何かに応えることが今の自分達の心と向き合っていることと繋がっている気がした。
去りゆく中学時代と未来へ進んでいくこと。
その時が来たらちゃんと中学時代をお見送りできるように今をちゃんと生きよう、つながろう、みたいに感じた。
で、高木さんと西片にはネコとの出会いがあるんですが、これも中学生になった時の2人の出会いと同じで、偶然であり必然であり...
でも、これが夏休みに会う口実になります。
将来のことや別れを意識させられてしまう時期だったのに、現実逃避できた感もあり...
ハナを可愛がる姿はまるで小さな夫婦みたいでしたね。
ただ小さな動物は残酷で、誰にでも笑顔を向けるんですね。
高木さんと西片でなくても愛嬌は振りまく。
結局、最後はハナとはお別れすることに。
実際、ハナと別れたダメージは大きかったと思います。見ていて自分も何かとてつもなく悲しかった。
特に高木さんにとっては自宅で飼えることになって、ハナとの関係においては死別ってことを除けば永遠だったはずなので。
でももっと言えば、それは今の自分と西片とをつなげている唯一のものだったのです。
その現実逃避の崩れは、目を逸らすことができていた(冒頭から描かれていた)これからへの不安が一気に顔を出したということで、高木さんは耐えきれなくなりました。
西片となら見られるはずだと(半ば強引に)信じたかったホタルの件もありましたしね。
そして、西片もそれを受けて堪えきれず涙を流し、高木さんとの永遠を誓うのでした。
ハナとの別れからお互いの将来の関係性に対する不安な思いも共有した瞬間だったのかもしれません。
そこに対して西片は高木さんを想い自然と答えが出てきたように思えました。
それは告白でもプロポーズでもなく、形式ではなく、西片そのままの気持ちでした。
3期の最後で踏み込んだはずが、答えを出しきれなかった西片の前にハナが現れ、高木さんとの小さな夫婦生活を体験させて去っていく。
ハナは高木さんを泣かせて、西片はようやく...
原作でもアニメでも描かれてきた高木さんに対する得体の知れない何らかの不思議な気持ち、その形をようやく本音として見つけることができたのかもしれません。
ハナは高木さんと西片にとんでもないからかい?をして去っていきました。
あ、夏祭りの花火今度は一緒に見れたんですね。
木村と高尾のサポートもあって。
原作からは枝分かれしているので、中学生活の物語の続きとして見た場合、自分はバンザイして喜べるテイストではないんですけど、元高木さんに続いていく2人の精神性とか人間性を描いているという点ではすごく良かったし、実際最後に西片家が出てきて、「こういうことだったのかもしれない」と自分なりの映画を受け止める感想が出てきたことが救いになりました。
西片家が出てきて良かったと思う。
結局はそこにつなげたかったのではないか、って、この映画は。
最後は、あの時姿を見せずに隠れていたホタルたちが一斉に現れて2人(or3人)を光で祝福しているかのようでした。
この映画は「からかい上手の高木さん」というより、「元高木さん、エピソード0」って感じかも。
あと、北条さんほぼ出てこなかったのが意外でした。
自分の道を歩みながらも、浜口を置き去りにしているというよりは、「小さい頃からの腐れ縁だしいつでも会えるでしょ。また会いましょ。」くらいの感じだと思うから、深刻にならずに頑張れ浜口。
というわけで、帰宅してから適当にエピソードを選んでアニメを見返してみた。
3期の「寄り道」シリーズと犬の「散歩」回。
映画と毛色が全然違ってて笑ってしまいました。
「からかい上手の高木さん」って、本来はよく練られたコントコメディ&恋愛心理バトルなんですよね(笑)