劇場公開日 2022年1月21日

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「サスペンス!狂気!葛藤!意外にも、エンターテインメント性の高い映画です。」さがす tさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0サスペンス!狂気!葛藤!意外にも、エンターテインメント性の高い映画です。

tさん
2022年2月13日
PCから投稿

非常によくできたサスペンス。

たとえ親しい関係であっても、その人が本当はどんな人か?我々は実はよく知らない。人間はすれ違いの連鎖の中で生きているんだなぁと。観終わった後の感想だ。

この映画は、智をめぐるサスペンスが主軸だ。智の伊東蒼演じる楓の視点からはじまる。楓から見た父親智はダメオヤジ。どこにでもいるような、下品な中年関西人だ。しかしながら、物語が進むに連れて、智の裏の顔が徐々に明らかになってくる。え!?こんな裏の顔があったんか・・・。この物語展開がお見事。めちゃくちゃハマってる。脚本が非常に良くできている。脚本の完成度の高さもさることながら、この意外性を後押ししているのが、主演の佐藤二郎の牧歌的な雰囲気、そして、舞台が関西でありこれまた牧歌的な生活描写だ。この描写がまた良い。実にリアリティがある。何気ない日常の裏で実は進行していた目を背けたくなるような現実を目の当たりにした時、我々は全てを理解する。智がなぜ、あのようなことをしてしまったのか。一見すると何気なく元気に生きているように見える人にも、様々な葛藤があるものだ。

山内の言う、「生きていても辛い人を僕が救ってあげる」という論理に対して、我々は対抗できるのだろうか。

智が陥ってしまったどん底。この映画はどん底描写も非常によくできており、手加減がない。本当に目を背けたくなる描写の連続だ。そしてこのどん底は、現代社会であれば誰にでも起こりうることだ。しかしながら、我々は、実際に自分がどん底に落ちるまでは気づかない。我々はALSについて何も知らない。要介護となった両親を殺してしまった者たちもたくさんいる。自分だけは大丈夫。本当にそうだろうか?あなたは、この映画を観てもなお、自分だけは大丈夫だと言い切れるのか?山内の言う、「生きていても辛い人を僕が救ってあげるんです」という論理に対して、我々は対抗できるのだろうか。私は正直言って自信がない。

基本的にはエンターテインメントです。若干、サイコ、スプラッター(・・・とはいえ、モロだしのシーンは1つもないので、ご安心を)、重厚な社会派映画っぽい雰囲気はありますが、「ぽい」だけです。難しい話は抜きにして、十二分に面白く、最後はきちんとスッキリした気分で映画館を去ることができるでしょう。冒険映画です!

P.S. グロい映画か?と言われると、そんなにグロくはないです。過激なモロだしシーンは無いのでご安心を。うまく画面には映らないようになってます(血が飛び散ったりするシーンが多少ある程度です)。グロいからと嫌だと言って観ないのは、勿体無いので、一言付け加えておきました。

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