「あごは、壊れるものか、外れるものなのか」さがす ちんさんの映画レビュー(感想・評価)
あごは、壊れるものか、外れるものなのか
2022年2月11日
年末から注目していた映画。
『岬の兄妹』で好きにになった監督なので期待していました。
いつもガラガラのテアトル梅田が満席になっているところを初めて見ました。
■映画全体の感想
テーマもストーリーも良かったです。出演者の演技も最高でした。
序盤の「あごは、壊れるものんやない、外れるもんや」のセリフに心掴まれました。大阪人らしい会話。
ただ、構成はすこしびっくりしました。
原田楓視点、智原田視点、山内視点の3構成でしたが、なぜこの構成にしたのかは伝わりにくいなと思いました。
テーマは座間市の事件や市川市の英会話講師殺人事件などを連想させるものでした。クーラーボックスに入った死体は、やはりギョッとします。
『岬の兄妹』はテーマが分かりやすく、公共福祉が届かない最下層の貧困層という、観ている側も問題意識を持ちやすかったです。しかし、本作は、分かりやすいストーリーではあるが、なにを伝えたいのかは少しぼやけるように感じました。
生きることと死ぬことの意味や尊厳死を問うものなのだと思いますが、結局父親 智は山内に加担してなにを得たのか分かりにくかったです。
ただ、他の方のレビューにもありましたが、片山監督の、見たくないものを見せられている感覚は本作にも感じました。「生かされる」側の気持ちなんて、聞きたくないし、知りたくない、綺麗なものだけを見て、楽しい思い出しか残したくない、という私たちに、ストレートなパンチをしてきます。
また、西成の描き方も秀逸。よくある「大阪っぽい」「ケンミンショー」っぽい、ステレオタイプな大阪ではなく、わりとほんとの西成っぽい、ジメッとした描き方がリアルでした。
■キャストについて
佐藤二郎
初めて真面目な演技を見ました。
いつもコメディ寄りのでふざけた役が多いイメージですが、こんなダークな演技できるんやとびっくりしました。
また、関西出身でもないのにネイティヴばりの関西弁をマスターしていて感動しました。
大阪の汚いおっさんをものの見事に再現していて面白かったです。
伊藤蒼
朝ドラで出演していたらしいのですが、本作が初見でした。
大阪出身の方らしく、関西弁は完璧。関西弁は演技になると臭くなりがちですが、彼女の演技はとても自然でした。
量産型ではなく、良い意味で個性を感じる女優さんだと思いました。
■有料コンテンツについて
「それは有料コンテンツだね」
強烈な印象を残すセリフですね。
このセリフがないと、山内のサイコ感は半減していた気がします。
脚本すごい。
明日から自分も使っていこうと思います。
■あごは壊れるもんやない、外れるもんや
名言。
これを聞いて、「なに屁理屈言うとんねん」とばかりにカンカンを蹴飛ばす楓の演技も良い。
■最後のピンポン 「さがす」の意味
このシーンのためにある映画なんだと思いました。
深い意味なんてわからないですが、楓の「やっと見つけた、お父ちゃん」というセリフがこの映画のタイトルへの答えなのでしょう。
しかし、なんでお父ちゃんは、またTwitterを再開したのか、、、、、、、、、誰か教えて