カード・カウンターのレビュー・感想・評価
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尋問スキルというよりは虐待スキル
そんなバカな⁉️
というくらいに、映画的な鮮やかさを徹底的に排除しています。
もしかしたら、プロの俳優を使ったドキュメンタリー仕立ての映画⁉️
そう思ってしまうほど、この手のジャンル(過去のトラウマへの復讐劇)の作品にしては、起伏がない。
むしろ、現実的にはこうなるよなぁ、〝映画〟じゃないんだから…〟と錯覚しかかるほど、劇的要素はありません。
この映画の狙いがそこにあるのなら満点ですが、娯楽作品として楽しめたのか?或いは何か大切なことをを訴求できたのか?感じられたのか?という問いには、なんとも反応が難しく、人それぞれですからね、としか答えようがない。
人に説明するのが極めて難しい、ちょっと困ったちゃんな映画です。
戦争のトラウマ
オスカー・アイザックのダークな一面が観られる、「タクシードライバー」のポール・シュレイダー監督・脚本、マーティン・スコセッシ製作総指揮というこれ以上ないスタッフが関わっているいぶし銀な映画。
カジノのカードゲームで表に出たカードをカウントしながら確率を計算し金儲けをする「ラスベガスをぶっつぶせ」の様なストーリーかと思っていたが、戦犯として服役した過去を持つ男がトラウマに打ち勝ち前へ進んで行こうとする、カードゲームは大筋には関係のないお話。
イラク戦争でアブグレイブ刑務所で犯した拷問の罪で服役していた男がその贖罪として同僚の息子カークを故郷へ帰そうと試みるが叶わず、かつての上司と(多分)拷問し合い打ち勝つ事で過去を払拭する・・・、が残念ながらその描写はない。
またカークが母親と話をすることを条件に女性と関係を持つのだが、リンダのガタイが余りにも立派なので余計なお世話ながら大丈夫かなと心配してしまったw。
結局ポール・シュレイダーやマーティン・スコセッシって戦争の狂気によって精神を病んだ男がもがき苦しみ、一生懸命前を向こうとする話が大好きだと言うことが改めてわかる、ある意味「タクシードライバー」よもう一度みたいな作品。
どちらかに寄せたほうが良かったのではないかなと思える一作
今年198本目(合計849本目/今月(2023年6月度)23本目)。
イラク戦争および、無茶苦茶な待遇が問題となったアメリカの刑務所関係と、その刑務所から出所した男性がかかわるギャンブルのお話です。
前者については日本でも批判的に報道された経緯があり知っている方も多いと思いますが、いかんせん少し前で最近はほとんど放映されないので(アメリカ視点では、今はウクライナア侵攻でいっぱい)、ちょっと忘れたかなという方も多いと思います。
一方、ギャンブルパートというか、映画のタイトル通りの部分に関しては、ポーカー等トランプのルールに関する理解が要求されますが、それ自体は「一応は」日本でもメジャーなゲーム(トランプのゲームルールの一つ)なので、そこまで傷はないかな…と思いきや、要は結局、お客さんと胴元(カジノやカジノを経営するホテル等)との「賭け式」や「払い戻し率」といった論点が多数含まれるところ、日本ではそれはご法度であり(ポーカー等自体は禁止されていないが、それをギャンブルにして賭け事にするとアウト)、ルール自体は「疑似カジノ」(金銭などを賭けないタイプの遊戯型施設などで見られる)で知っている方も多いと思いますが、個々具体的な賭け式だのオッズだの胴元の取り分だのといった話は日本ではなじみがなく(というより、日本からでは、ラスベガスなり、カジノが合法的にできる国でちょっと遊んだ、くらいしか考えられない)、そちらでの見方もちょっと厳しいです。
特に後者に関しては説明もなく、タイトルにあるいわゆる「カードカウンター」(カードカウンティング)は、一般的に胴元が有利(換言すれば、客が不利)になるこれらの賭け式において客側が有利に持っていこうとしたテクニックの一つを指すところ、これも当然日本では「出番がない」上に、そのために一応の説明はあるものの、上記の刑務所シーン(なお、これらの虐待シーンほかが激しすぎるのでR15になったものと思われます。ギャンブルシーンではせいぜいPG12程度)もどんどん出てきて、中途半端なストーリー展開のまま、そのまま終わってしまうという部分を兼ねてしまいます。また、前者(ギャンブルのこと)が日本ではそもそも関係ないのと同様に、日本では刑務所であっても最低限の人権は守られるので(日本国憲法)映画のような描写にならず(戦後の混乱期等除く)、そのどちらの解釈にとっても、日本ではかなりなじみがなかったりしますので、どう見るのか…というのが難しいです。
そのようなことまで考えると、採点としては、
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(減点0.5/何を述べたいか、映画の主義主張が(日本国内では)はっきりとしない)
…という点に大半つきます。
アメリカにおける刑務所などの人権問題の問題提起と解するならそちらに寄せるべきだったし、ギャンブルの紹介(ただし、日本では賭け事としてはできない)として見るならそちらに寄せるべきだったし、どうみたらよいか…というのがかなり中途半端に思えます。
典型的な「日本で放映されることを想定していない」(そもそも刑務所の人権蹂躙問題は先進国ともいえるアメリカのその例が特殊すぎで、およそ先進国というような国でそんなことをやっているとアウトな事案)というタイプの映画では…と思えます。
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なぜキッドと呼んだのか?
カードより復讐のゆくえ
『魂のゆくえ』に続いて、ポール・シュレイダーお得意のキリスト教への信仰で悶々と苦悩や葛藤する主人公の手記および心の声=己と向き合う内省映画の様式で綴られる復讐と贖罪のスリラー。コール。
驚いたのは俺がムショ生活に合っていたことだ。ノイズ(=周囲の雑音ばかりか想定外に起こること)を嫌い、ギャンブルでは控えめに勝って、日課やルーティン、同じことの繰り返しを好む男。天意に背くようなことはせず、ただ淡々と同じ日々を繰り返す。復讐したい気持ちを抑えて己を律するように規則正しく生きる。そして、それがカードを数えるという行為に表れている。彼と出逢うまでは…。
ビルとテル、そして"C"のカーク。こいつ何様のつもりだ?ザ・キッドに改名。『ハスラー』よろしく面倒を見て師弟関係を築いていく中で、(自分自身も一度は通ったであろう思いに動く)彼をどうにかそこから救いたいという気持ちに駆られ大きな賭けに出る。復讐するなら我も罰し、人間には復讐しないことを選んでも復讐しなければならない時がある。
脚本監督ポール・シュレイダー✕製作総指揮マーティン・スコセッシ御大=今なお異彩を放ち続け多くのフォロワーを生む映画史に燦然と輝く傑作『タクシードライバー』名コンビが、またしても贈る類似したテーマや惹き込まれては幻惑されるような作風、語り口を持つ作品(言ってしまえば同じフォーマット)は、今回も決して裏切られなかった。
余談ながら『ムーンナイト』で仲良しイーサン・ホークが傑作『魂のゆくえ』で演じた次は、主演オスカー・アイザック✕共演タイ・シェリダン✕ティファニー・ハディッシュ✕安定のウィレム・デフォー。流石に面白い。これが昔なら主人公ウィリアムは、ポール・ニューマンに演じて欲しさもあったかも。オールイン。ちなみにキャストの5番目はMr. USAです。USA!USA!USA!
P.S. ずっと後ろのオジサンが溜息ついていた。
勝手に関連作品『タクシー・ドライバー』『魂のゆくえ』『ハスラー』『ハードエイト』『ミーン・ストリート』『ワイルド・ギャンブル』『ラウンダーズ』『天使の入江』『ラスベガスをぶっつぶせ』
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