あのことのレビュー・感想・評価
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これがノーベル賞作家の作品?
法律で中絶が禁止されていた1960年代フランスで、望まぬ妊娠をした大学生のアンヌは、学業を続けるため違法な中絶を流産という形にするため12週間にわたり色々試す話。
アンヌの目線で困ったり嘘をついたりする様子は確かに臨場感有ったが、これでノーベル賞作家の原作?って思った。
ま、小説と映画は別物だから小説は素晴らしいのかもしれないが。
高校生ならもっと困るだろうが、大学生なら休学とか他にも手段がありそうな気がする。特に、なりたい職業が小説家なら、時間はどうでもなりそうだし、子供がいても小説なら書けるでしょ、って感じた。
アンナ役のアナマリア・バルトロメイは頑張ってたと思うが、綺麗でも可愛い訳でもないから、あまり感情移入できなかった。
題の「あのこと」とは「出来事」らしいから、中絶の事なんだろうが、原作者の実体験なのかな。
理不尽な世界の中で窮地に立たされた女性の凄惨な試行錯誤を至近距離で凝視するドラマ
1963年のアングレーム。大学で文学を専攻しているアンヌは教授もその才能に一目置くほど優秀な学生。進級のための大切な試験を前にしたある日体調の異変を感じた彼女は病院に行き妊娠していることを知らされ愕然とする。すぐさま中絶を希望するアンヌだったが当時妊娠中絶は違法であり、それを口にすることすら憚られる時代。親にも友人にも相談出来ないアンヌはただ一人で解決策を模索するが・・・。
アニー・エルノーの約60年前の実体験を綴った短編『事件』を映画化した作品ということですが、映像そのものには画面アスペクト比が4:3のスタンダードサイズであること以外ノスタルジーを喚起するような装飾は一切なし。引きのカットもほとんどなくアンヌに寄り添うカメラが彼女の試行錯誤を凝視しているので、アンヌの透き通るような佇まいに目を奪われながらもその試行錯誤の凄惨さに何度も目を背けそうになりました。劇中で引用されるルイ・アラゴンの詩に象徴されている通りアンヌが求めているのは自由であり、教授が読み上げるヴィクトル・ユーゴーの言葉を聞いた瞬間のアンヌの表情を見た瞬間に、本作が一人の女性が理不尽な世界を相手に戦い抜く勇敢な物語だと気付かされました。
このような非人道的な時代は1973年の米国における“ロー対ウェイド”判決、そしてフランスにおける1975年のヴェイユ法の施行によって終わったわけではなく、その後も延々と無数の悲劇が繰り返され、果ては米国連邦最高裁が“ロー対ウェイド“判決を覆す判断を示すという逆風の中で本作が上映されていることには途方もなく重い意味があると思います。
ほとんど笑顔を見せることのないままずっと映り続けているアンヌを演じるアナマリア・ヴァルトロメイの文字通り体当たりの熱演がとにかく凄まじいので、いつまでも脳裏に残像が残ります。
女性にも選択肢はある。
まだ中絶が法律で認められていなかったフランスで望まぬ妊娠をしてしまった女子大生の主人公があらゆる手を尽くして自分の人生を犠牲にしないために中絶しようと模索する話。
カメラはずっと主人公に寄り添い、画角も狭く、妊娠してからの時間経過がこまめに提示される。そんな中で、誰も頼りにできずに孤独に苦しむ主人公を見ていて「どうか無事に中絶できますように!」と祈らないではいられない。これなら中絶に反対する人でも多少は主人公を応援してしまうのではないか。
中絶が違法だったが故に何度も痛い思いをする主人公を見て、自分だったらこの苦痛に耐えてまで中絶するだろうかと思ったけど、痛みは一時のもの、今後の人生ずっと苦しむと考えたらそんな痛み痛くない。てかどうせ産むにしてもめっちゃ痛いし。同じ痛い思いするなら確実に私は人生を選びたい。
そして中絶が合法な現代でもこの時代と変わらないところは未だにあるし。アメリカほどキリスト教が浸透していない日本は空気的に中絶も1つの選択ですよみたいな面してるけど、実際自分妊娠しちゃったら誰にも何も言わずに中絶すると思う。そうして、この主人公みたいに何事も無かったかのように社会に戻る。妊娠において産むも中絶するも本人は孤独なのはずっと変わらない気がする。
本当につくづく思うけど男って夜遊び何のリスクも追わなくて羨ましいなー!一度の過ちで全部が犠牲になるなんてフェアじゃない!中絶したとしても「中絶」という苦しみは残るし!もっと女に敬意を払えー!!(笑)
トランプ元大統領はマジでない
男性からすると、まさしく女性性を擬似体験できる作品となっているのではないでしょうか?
メディアに良く出てくるお化粧をしておしゃれをし、恋愛を楽しむのが女性ではないです。だってこれは、男性でもできることでしょ?本作のアンヌの様に妊娠のリスクがありキャリアを断たれるリスクがあり主婦という病になるリスクがあるのが女性の本質です。
舞台は1960年代でしたが、人工中絶が合法化された現代に生きる日本人の私にも、他人事には思えませんでした。だから、本作を通して女性性の痛みを感じた全ての人達は、人工中絶禁止法が、女性の人権侵害、生命侵害をする全くばかげた法律だと理解できると思うのです。「生命の尊重」だと?だったら、戦争をする意義も説明してみろと言いたい。
戦争は、支配層が神の名の下に神を利用して民衆の命を握る行為ですが、人工中絶禁止法も戦争と本質が同じだと感じます。それは、絶対的に自分のものである女性の命、女性の身体の一部である胎児の命を支配層が日常的に握っているからです。
アメリカの中間選挙は予想外に民主党が得票したわけですが、これは人工中絶禁止法に反対する女性の票が入ったと言われています。
トランプ元大統領及び人工中絶禁止法に賛成する奴らは全員、アンヌと同じ目にあわせたい。また、中絶が出来なかったor失敗した大勢の女性達とも同じ目にあわせたい。本作は男性にも十分想像力を発揮できる作品だと思うのですが、同じ目にあうとか、どうですかね?
仮にこんな野蛮な法律が復活するならば、もうテクノロジーの力で、機械的に妊娠出産を性別問わずコントロールできる様になって欲しいですね。セックスというのが、過去の野蛮人が行ってきた行為になれば、人類はもの凄い進化といえますし、性欲を取り上げちゃえば、犯罪も大幅に減るのではないでしょうか。それくらい、女性は怒っています。
女性の性欲や向上心を隠さず(隠す必要がないから)表現しているところも、清々しくて良かったです。
衝撃の映画体験
2022.97本目
自分の体との、そして周りの人間との孤独な戦い。
その苦しい戦いの末に「ドボン」と便器に落ちた
赤黒いぐちゃぐちゃの塊。
大切な一つの生のはずなのに、「彼女を長く苦しめてきた悪魔だ」と思ってしまった。
スリラー映画やホラー映画より、痛くて、苦しくて、
焦燥感と閉塞感を感じた。
この映画には、性や生が美しく描かれない。むしろ、生々しく恐ろしいものとして描かれている。それも良かった。
鑑賞中の衝撃は、今年1番かもしれない…
自分と歳が近く、そして自分も生理が遅れていてソワソワし始めているから、感情移入も一層だったと思う。
鑑賞中も鑑賞後も、痛くて苦しくてボロボロ泣いてしまった…
すごいものを体験してしまった…!!
いらなきゃやるな! これも人類の永遠のテーマ
40過ぎても不妊治療や大金払ってまで人に産んでもらおうなんて人もいれば赤ちゃんポストや中絶や捨て子は後を絶たない やらりアラブの国の様に夫婦以外のエッチ禁止や男の側に罰則を設けるべき❗でも今のフランスはパートナーはいらないけど子供だけ欲しい何て人も多数いるようで現状はどうなのだろうか⁉️
でもハサミで切って捨てたら今でも犯罪だろ!
主人公に「案ずるより産むが安し」と教えたかった。賢さゆえに孤独になっていく女子大生
これは震え上がる男性続出だろうなあ。原作も監督も演者も、女性の賜物である。中絶のリアル描写は圧巻だ。かと言って、フェミニスト寄りのメッセージを感じるだけの啓発映画として見てはもったいないと思う。
欲望が羞恥心に勝った、って登場人物の一人が言ってたけど、二十歳前後の若者ってそんなものですね。そして、頭ではサルトルの実存主義を理解しようとしているのに、自分の身
に起こったことには脊髄反応のように一つの結論しか持てない悲しさ。発想を転換すれば、命を危険に晒すこともなかっただろうにね。60年代ってそんな時代だったのか。かたや「本音と建て前」の日本社会、(最近まで優生保護法なんかもあり)昔も今も比較的容易に中絶できてしまう。そして少子化。かたや現代フランスでは婚内子より未婚非婚カップルの子どもの数の方が多かったんでしたっけ。この辺はエビデンスなしに勝手に言えないけど、婚内子にこだわる日本社会の歪さの方にまで考えが及んでしまった。
刹那的に深く交わってもその後の妊娠をきっかけにどんどん孤独になっていく皮肉。相手の男性とも、両親とも、友人とも。自分だけの努力と才能で勝ち取ってきた高学歴者ゆえの孤独がヒリヒリ、相談下手。ヤンキー気質の人の方が柔軟に運命を受けれてコミュティの中で問題を解決する知恵を持っている?のはどこの国も同じなのかな。
365日働く階級の両親、特にお母さんとアンヌの関係性、セリフや所作によく表現されていたと思う。お母さんのピンタは、本当に痛かった。子どもって、いい方向にも悪しき方向にも、親の理解と想像を超えていくものだ。
ちょっと長くてつかれた。
監督が女性でよかった
妊娠中絶の是非については、議論の余地はあるとは思うけど、まだ妊娠中絶が認められなかった時代に、誤って妊娠してしまい未来を奪われそうになる女性の葛藤と苦痛が伝わってくる。
生々しいシーンも多く、男性監督だったらヤバいな…と思っていましたが、監督が女性で少しホッとしました。
主演のアナマリア・バルトロメイの体当たりな演技が凄まじいです。
意味深な映画
1960年代初頭と思しきフランスが舞台の映画でした。主人公は文学専攻の女子大生のアンヌ。成績優秀で担当教官からも将来を嘱望されるほど。ところが同年代の男子大生といい仲になり、生理が来ないので検査してみると、妊娠していることが発覚してアンヌの苦闘の物語は始まります。
これは観終わった後に調べたことですが、フランスでは19世紀初頭、まだナポレオンが皇帝だった1810年に制定された刑法により、中絶も避妊も違法とされており、1960年代に至ってもこの法律は生きていたようです。そのためアンヌは、普通の病院に行っても人工中絶手術を受けることが出来ず、自分で子宮に棒を突っ込んで堕胎を試みるものの失敗。最終的には同級生の男友達に紹介された非合法の中絶専門の女医(医師免許があるかすら不明だけど)に施術を依頼することになりました。
これまた鑑賞後に調べたことですが、当時人工中絶が非合法だったとは言え、その需要は少なからずあったようで、本作に登場するような非合法に中絶手術を請け負う女性が結構いたとか。ただ当たり前の話設備も技術も覚束無い闇医者が手術をする訳で、リスクも高かったようです。
そんな中絶禁止法がなくなり、フランスで人工中絶が合法化されたのは、この物語から10年以上経った1974年に成立した通称ヴェイユ法を待つことになるそうです。
要はこの物語、女性にとってのある意味暗黒時代の夜明け前を描いた作品でした。
興味深いのは、フランスで中絶が合法化されて半世紀ほど経過した訳ですが、同時期にロー対ウェイド判決により人工妊娠中絶が合法化されたアメリカにおいて、先ごろこうした流れに逆行する動きが出ているということ。事ある毎にアメリカの野卑で幼稚なところをバカにするフランスのこと、本作も婉曲的にアメリカの昨今の動きを皮肉っているのかしらと思わなくもないというのが感想でした。
肝心の映画の中身ですが、アンヌ役のアナマリア・ヴァルトロメイが難しい役柄に体当たりしていたのが印象的でした。親や友達に当たり散らしながらも、必死で中絶をしようとする哀れな姿を演じる様は、まさに迫真の演技でした。
あと、筋とは全く関係ありませんが、アンヌに闇医者を紹介した同級生役のケイシー・モッテ・クラインが、若い頃のプーチンに似ていて何となく笑ってしまいました。
そんな訳で、体当たりの演技で物語を面白くしてくれたアナマリア・ヴァルトロメイの活躍に★4の評価としたいと思います。
目を背けてはいけない作品
「レボリューショナリー・ロード」
「17歳の瞳にうつる世界」
のどちらも見たが、そのどちらとも違う作品。
一言で言えば「孤独」だ。
中絶が違法な時代、誰にも言えず、悩み苦しむ。
その苦しみを観客も追体験する。
目を背けてはいけない。
映画は「省略の芸術」なので、「見せなくても分かるよね」ということは見せない。
でも本作は違う。
その生々しい場面を見せる。
これは監督の明確なメッセージだ。
「目を背けるな」と。
なぜなら、これは「昔話」ではなく、「現代の問題」なのだから。
米国で「ローvsウェイド判決」が覆された今こそ見るべき作品。
これは海外の問題じゃない。
安価で安全な薬品による中絶方法が海外では一般的なのに、
日本ではリスクのある「掻把法」という方法が用いられる。
(本作と同じかな?)
ピル、アフターピル使用のハードルは高い。
これらは全て同じ延長線上にあり、他人事じゃなく、日本でも同じなのだ。
メッセージ性に優れ、サスペンスとして秀逸だが、主人公には同情できない
映画が始まって、スクリーンが「スタンダード」サイズであることに戸惑うが、やがて、その窮屈な画面から、主人公の置かれた八方塞がりな状況と、閉塞感や息苦しさがひしひしと感じられて、このフォーマットが高い効果を上げていることに気付く。
中絶を違法とする社会制度を声高に非難するような映画ではないが、女性が心身に被るダメージの大きさを生々しく描くことにより、その理不尽さと非人道性が肌で感じられるようになっている。
孤独や不安や焦りに苛まれながら、自らの未来を命をかけて掴み取ろうとする女性の、スリルとサスペンスの物語としても、非常に良くできている。
ただし、危険を承知していながらそのような事態を招いた主人公の行動は、軽はずみだと言わざるを得ないし、妊娠の発覚後も、避妊の必要はないと夜遊びを続けるその姿からは、やはり「自業自得」という言葉が思い浮かんでしまう。何よりも、胎児の命を奪うことに一切のためらいも罪悪感も感じていない主人公には、どうしても感情移入することができなかった。
ラストも、一応、ハッビーエンドになっているが、敢えて「学業の道も閉ざされ、何もかも失った」みたいなエンディングにした方が、主人公の置かれた過酷さや、当時の社会制度の非情さが、より際立ったのではないだろうか?
コレはキツい…
コレはキツい
正直なところ
見てられなかった
場面も多々あった
それは自分が男だからか?
でも自分の夢を叶える為に
今は仕方なかった…
たとえ産んだとしても
愛せず憎しみが出る可能性も
なきにしもあらず
望まない妊娠
世界中でいろいろ
ニュースになってるが
難しいですね〜
新聞売りの紹介で。
先日観た「わたしは最悪。」と同じ印象を持った。とても主人公の言動に同意できない。たぶん、彼女が自分の娘だったら思うと胃がキリキリしてくる。あの親父のように呑気にラジオなんて聴いてる場合じゃない。・・あ、そうだこれは1960年代の話だった。中絶が違法だった時代のことだ。はじめにそれを理解してたはずだった。だけど、どこか純真に見えない彼女を応援する気分は湧いてこない。ほう、最後はそれで人生の軌道修正ができたつもりとでも?
本当に大切なのはどのことよ?
中絶が違法だった1960年代のフランス。望まぬ妊娠をした女子大生アンヌがお腹の子を“なんとかしよう”と奮闘する話。
いや、いや。アンヌしっかりせえよ。そもそも気持ちのない男遊びが原因で、どちらにも等しく責任がある。確かに中絶できずに女性側だけが痛みを負って傷付くのは残酷だけどどうしても同情できなかった。しかも誰ひとりとしてお腹の子に対する想いが微塵もない。一番かわいそうなのは誰なのか。
これだけ身を削る思いをしても結局アンヌの価値観は何も変わっていないんだろうな。どれだけ優秀か知らんけど、せめて小さな命に詫びて自分を見つめ直して生きていってほしい。
すごい緊張感。孤独。作家になるという決意。エルノーの原作も素晴ら...
すごい緊張感。孤独。作家になるという決意。エルノーの原作も素晴らしいんだと思う。母親は愚か。男たちのダメさ加減。
欲望と学業への忠誠(男ではなく)。
2021年。オドレイ・ディワン監督。今年のノーベル文学賞を受賞した作家アニー・エルノーの原作を映画化。セックス自体がタブー視される社会風潮のなか、優秀な女子大学生が妊娠する。中絶が違法だった当時、親にも友人にも相談できないまま、学業を優先するためになんとか中絶の方法を探すが、、、という話。2021ヴェネチア金獅子賞。
うっかり冒頭で誘ってくる消防士が相手の男かと思いきや、中盤になって別の幼馴染らしき若い男だと判明。それでも消防士は主人公を誘い続け、主人公もまんざらではない様子なのだ。ここで問題なのは、妊娠ごときで欲望を断念したりしないということだ。しかもその欲望に男は誘惑する者としてしか必要なく、かけがえのない存在ではありえない。学業でも同じ構図で、ある男性教授との関係からわかるのは、教授のようになることではなく、教授が関与している学問・知識を吸収したいという思いなのだ。欲望や学業にはどこまでも忠誠を誓うのだが、人(男)の関与は求めていない。
主人公側からの目線、その主人公を見る目線、主人公側からの目線、という古典的ともいえるカットバックで主人公の苦境への没入感を高めている。男たちがみな間抜けにみえる。
女性に選択させなかった時代
原作を読んでいたので、衝撃的とは言えなかったが、原作の世界観をよく表した俳優たちは力演している。1960年代は、フランスだけでなく同じカトリック国のイタリアなども同様に女性に選択させなかった、ひどい時代である。この後にフェミニズム運動が高揚するのも分かる。日本の場合は戦後早々と経済的理由の中絶を認めたのだが、ピル解禁は遅かった。いずれにしても、女に選択させなかったのである。昔のフランスの大学の文学の授業風景も何か日本と違って面白い。意外にスパルタなんだなと。
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