劇場公開日 2022年12月2日

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「主人公に「案ずるより産むが安し」と教えたかった。賢さゆえに孤独になっていく女子大生」あのこと kumiko21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5主人公に「案ずるより産むが安し」と教えたかった。賢さゆえに孤独になっていく女子大生

2022年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 これは震え上がる男性続出だろうなあ。原作も監督も演者も、女性の賜物である。中絶のリアル描写は圧巻だ。かと言って、フェミニスト寄りのメッセージを感じるだけの啓発映画として見てはもったいないと思う。
 欲望が羞恥心に勝った、って登場人物の一人が言ってたけど、二十歳前後の若者ってそんなものですね。そして、頭ではサルトルの実存主義を理解しようとしているのに、自分の身
に起こったことには脊髄反応のように一つの結論しか持てない悲しさ。発想を転換すれば、命を危険に晒すこともなかっただろうにね。60年代ってそんな時代だったのか。かたや「本音と建て前」の日本社会、(最近まで優生保護法なんかもあり)昔も今も比較的容易に中絶できてしまう。そして少子化。かたや現代フランスでは婚内子より未婚非婚カップルの子どもの数の方が多かったんでしたっけ。この辺はエビデンスなしに勝手に言えないけど、婚内子にこだわる日本社会の歪さの方にまで考えが及んでしまった。
 刹那的に深く交わってもその後の妊娠をきっかけにどんどん孤独になっていく皮肉。相手の男性とも、両親とも、友人とも。自分だけの努力と才能で勝ち取ってきた高学歴者ゆえの孤独がヒリヒリ、相談下手。ヤンキー気質の人の方が柔軟に運命を受けれてコミュティの中で問題を解決する知恵を持っている?のはどこの国も同じなのかな。
 365日働く階級の両親、特にお母さんとアンヌの関係性、セリフや所作によく表現されていたと思う。お母さんのピンタは、本当に痛かった。子どもって、いい方向にも悪しき方向にも、親の理解と想像を超えていくものだ。
 ちょっと長くてつかれた。

Kumiko21