「欲望と学業への忠誠(男ではなく)。」あのこと 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
欲望と学業への忠誠(男ではなく)。
2021年。オドレイ・ディワン監督。今年のノーベル文学賞を受賞した作家アニー・エルノーの原作を映画化。セックス自体がタブー視される社会風潮のなか、優秀な女子大学生が妊娠する。中絶が違法だった当時、親にも友人にも相談できないまま、学業を優先するためになんとか中絶の方法を探すが、、、という話。2021ヴェネチア金獅子賞。
うっかり冒頭で誘ってくる消防士が相手の男かと思いきや、中盤になって別の幼馴染らしき若い男だと判明。それでも消防士は主人公を誘い続け、主人公もまんざらではない様子なのだ。ここで問題なのは、妊娠ごときで欲望を断念したりしないということだ。しかもその欲望に男は誘惑する者としてしか必要なく、かけがえのない存在ではありえない。学業でも同じ構図で、ある男性教授との関係からわかるのは、教授のようになることではなく、教授が関与している学問・知識を吸収したいという思いなのだ。欲望や学業にはどこまでも忠誠を誓うのだが、人(男)の関与は求めていない。
主人公側からの目線、その主人公を見る目線、主人公側からの目線、という古典的ともいえるカットバックで主人公の苦境への没入感を高めている。男たちがみな間抜けにみえる。
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