「【主人公の女子大学生の視点で描いた圧倒的臨場感、妊娠が進むに連れて作品への半端ない没入感を味わった作品。”痛かった、不安だった。それでも私は未来が欲しかった・・。”手に汗を握りながら観た作品である。】」あのこと NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【主人公の女子大学生の視点で描いた圧倒的臨場感、妊娠が進むに連れて作品への半端ない没入感を味わった作品。”痛かった、不安だった。それでも私は未来が欲しかった・・。”手に汗を握りながら観た作品である。】
ー 冒頭は、”避妊しないから妊娠したんだろう!”と思いながら観ていたが、女性にも当たり前だが性欲はあるし、(だから、避妊具や薬が開発されてきた。)アンヌ(アナマリア・バルトロメイ)だけの責任じゃないよな、と考え直して鑑賞続行。
1960年代のフランスって、中絶が違法とされていた事も、初めて知った。
私は中絶は幾つかの条件を付けて”是”とする考えを持っている。
何故なら、罪なき命を亡くする行為には違いないが、望まない妊娠をして未来が変わってしまった女性達が現在、特に過去も含めて世界には、多数いるからである。今作でも言及されているが、無理な中絶をして、死に至ったり、生まれた子を遺棄したり・・。ー
◆感想
・アンヌを演じたアナマリア・バルトロメイの強い意志を感じる大きな眼とその目力が印象的である。美しく、白い肌も勿論であるが・・。
今作では、彼女の眼と目力に強く引き込まれた。
・アンヌが子を身籠った事が分かるシーンから、第一週~第一二週と章立てで物語は進む。
ー この構成が絶妙である。いつの間にか、アンヌが一人追い込まれて行く姿が、自分の心と被って行く・・。早く、早く何とかしないと・・。焦燥感が半端ない・・。-
・普通は、中絶シーンがある映画は、相手の男が付き添ったりするものだが、今作では父親の若き男は、当てにならず友もあてにはならない・・。時代的背景があるのだろうが、アンヌは正に孤立無援状態になっていくのである。
ー 故に、夢見る教師になるための勉強も疎かになっていく・・。見ていて、辛い。ー
■壮絶なのは、アンヌが自ら子を堕胎しようとするシーンである。
私は男なので良く分からないが、物凄く痛そうである。”除菌とか、そんなので、良いのか・・、”と心配してしまったし、闇の堕胎業の女性の部屋でのシーンも、物凄く痛そうである。傷みゆえに声を上げると、睨みつける堕胎業の女性の冷酷な目。
ビックリしたのは、彼女がトイレで子を堕胎するシーンである。
もう、痛そうで、可哀想で・・。手に汗を握りながら観ていたよ・・、自分がアンヌになったかのように・・。
それにしても、アンヌのど根性と、アンヌを演じたアナマリア・バルトロメイの覚悟を決めた姿は凄かった・・。
<ご存じの通り、今作は今年のノーベル文学賞の受賞が決まった、アニー・エルノーが、自身の中絶体験を題材にした私小説「事件」の映画化作品である。
中絶が違法とされた時代に、アンヌが、自由で自ら望んだ未来を手に入れるために命懸けで奔走し、独り孤独と恐怖と焦燥を抱えながら、突き進む姿を、アンヌの視点で赤裸々に描いた作品。
映画を観ていてその世界に没入する事は良くあるが、異性の視点でここまで我が事ながらの様に没入して観た作品は、初めてである。>
NOBUさん、ご無沙汰しています。私も普段全くTVを観ませんよ。年末感無いですね。本作の様な女性監督による女性映画が最近増えてきてとても喜ばしいことだと思ってます。女性レビュアーとして、今の男性社会に対する辛辣な感想を書きたいと思っていますし、本作の様な作品を鑑賞する男性は、想像力が高い方だと思ってますし、想像力の高さを期待してるんですよね!