「映画好きが映画館でじっくり観たい映画なんだけどね〜」パワー・オブ・ザ・ドッグ 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)
映画好きが映画館でじっくり観たい映画なんだけどね〜
アメリカ西部の広大な牧場で
颯爽と馬を駆るドクター・ストレンジ!
では無く、ベネディクト・カンバーバッチ。
最初に作品紹介を読んだ時にカンバーバッチのカウボーイ?
なんかピンと来なかったけど実際に映画を観てみると
彼以外に考えられないくらいカンバーバッチにピッタリの役!
西部劇の牧場主と言うとテンプレ的な荒っぽい男を連想しがちだけど
カンバーバッチ演じる牧場主は大学を出て楽器も嗜む知的な男。
それでいて荒っぽいカウボーイ達がちゃんと従う様な
強い一面をもっており、常に自信に溢れた男で誰に対しても上から目線。
牛を移動させる道中に立ち寄った小さな宿屋、
切り盛りする未亡人と、その息子の痩せっぽちの高校生を
露骨に馬鹿にした態度を取る。
気に入らないなら単に無視すれば良いだけなのに
わざわざ馬鹿にした言葉を皆の前で投げ付けるなんて.....
彼自身がある意味で己の男性性を誇示する事に
異常に拘っていることが伝わって来るシーン。
嫌味過ぎて、観ているこっちまで緊張して来る。
そんな男にも実は、誰にも言えない秘密があった!
さらに、心優しい男に見えた牧場主の弟も、また
違った意味での女性蔑視の塊であった。
そして、物語の中盤からあの痩せっぽちの息子が
物語を意外な方向に導いてゆく。
中々に複雑で今日的な見応えのある映画でした。
最後に笑うのは誰か?
見応え有りの作品でした。
で、月に8本ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては
本当は映画好きが映画館でじっくり観たい様な
映像的にも内容的にも重層的な複雑な映画!
ネットの小さな画面で観るだけなんて勿体ないわ〜〜
昨年暮れに一部の映画館で期間限定で上映されていたけど
あの「ピアノ・レッスン」のジェーン・カンピオン監督の作品と
ちゃんと認識しておらず、うっかり見逃してしまいました。
「ピアノ・レッスン」は夫の有害な男性性により
心が壊れゆく妻と娘、そしてその再生を描いた映画だったと
記憶しているのだけど、今作は有害な男性性プラス
その男性性を持って生きなければならなかった男性も実は
結構苦しいと言う中々に奥深い作品になっている。
Netflix作品と言うことでアメリカのアカデミー賞では
監督賞しか取れなかった訳だけど
Netflixでなければこの様な内面的な奥深い映画に
お金を出してくれなかった。
映画館でじっくり観たい本当の映画好きに向けた作品に
お金を出せない映画界が、ネット配信の作品を目の敵にして
賞を与え無いと言うのも本末転倒で実に情けないわな。
期間限定でもこの様な良い作品を上映してくれた
Cinema KOBE のスタッフの皆さん!
本当にありがとうございました。