「【”動物の生皮を剥いで、綱を編む・・。”脳内フル回転で観る映画。今作をミステリーとして観るか、青年の成長物語として観るか、は観る側の感性次第である作品。】」パワー・オブ・ザ・ドッグ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”動物の生皮を剥いで、綱を編む・・。”脳内フル回転で観る映画。今作をミステリーとして観るか、青年の成長物語として観るか、は観る側の感性次第である作品。】
ー 舞台は、1925年 モンタナ州。大牧場を営むフィル(ベネディクト・カンバーバッチ:最近の活躍は凄い。)は横柄で、尊大な態度のカウボーイ。
弟のジョージ(ジェシー・プレモンス)は対照的に、温和な男として描かれる。
◆感想
・フィルとジョージ達が、放牧の途中に寄った、未亡人ローズ(キルスティン・ダンスト)が経営する食堂&宿屋。
卓上に置かれた紙で作った精巧な花。それは、ローズの息子ピーター(コディ・スミット・マクフィー:華奢で、白く、無表情なのが、印象的である。)が作ったモノだった。
だが、フィルはそれを見つけ、火をつけ煙草に火をつける。更には、華奢なジョージの給仕姿も揶揄う。
- 調理場で涙するローズ。慰めるジョージ。だが、ピーターはフィルを冷たい目で見ている。-
・結婚したジョージとローズ。幸せそうである。だが、フィルはローズに対し”俺はお前の兄ではない!女狐め!”と尋常でない罵りの言葉を浴びせる。
- 嫉妬か? だが、違う気がする・・。-
・ローズは、日々のフィルの嫌がらせに憔悴し、アルコールに頼る様になる。そこへ夏季休暇で、戻って来たピーター。口にした言葉【ここには、嫌な奴がいる・・。】
- フィルは当初、ピーターを揶揄うが、ある日、雄大なモンタナの山脈を見てピーターに問う。
”アレは何に見える。”
”犬が大きな口を開けているように見える。”
”お前もか!”
徐々にフィルのピーターに対する接し方が変わって来る。
立派な男にするために、彼が且つて命を助けられた”ブロンコ・ヘンリー”の鞍にピーターを乗せたり・・。そして、そこに掛けられた綱。-
・風呂に入らないフィルだが、自分だけの秘密の土地があり、そこで水浴びをする。そして、フィルをつけて来たピーターが叢の中で見つけた”ブロンコ・ヘンリー”と書かれた木箱に入っていた冊子。冊子には、数々の写真が・・。
ー 更に、ピーターに”ブロンコ・ヘンリー”に助けられた時のことを問われて・・。
ピーターの”裸で抱き合って、寒さを凌いだの・・?という言葉”
そういう事だったのか・・。-
・フィルは、ブロンコ・ヘンリーの様に、馬の生皮を干し、綱を編む。それを見ていたピーターは、ある日、独りで馬に乗り、山に分け入り、途中”死んだ”動物の皮を剥ぐ。
- ピーターが、独りで小動物を解剖している姿。酒に溺れる母の姿。その母を揶揄うフィル。フィルは更に、亡き父の事をピーターに聞く。
ピーターは、冷静な顔で
”父はアル中で、自分で首を吊った。それを抱えて下ろしたのは僕。”
と答える・・。ー
・酒に酔った、ローズはフィルの生皮を勝手に売ってしまう。怒るフィル。だが、ピーターは”大丈夫、僕が”皮””を持っているから・・、と冷徹な目でフィルを見る。
そして、二人で出かけた先で、フィルは手に怪我をし・・。
終幕、彼は”炭疽症”で、急死する事が告げられる、酷い発作を発しながら、息絶えたと・・。
<真の”パワー・オブ・ザ・ドッグ”は誰であったのか。
私には、か細き身体ながら、笑顔無き、動物解体を淡々と行う”人物”に思えたのだが・・。
2時間強、完全に魅入られた作品であった。>