「さすらいの太陽」パラレル・マザーズ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
さすらいの太陽
日本の隠れた名作アニメ「さすらいの太陽」(1971)。新生児を取り違えられ、一方は裕福な家庭に育ち、他方では貧しいながらもギターと歌で明るく育つというストーリーでしたが、このアルモドバル作品ではそれをプロットに生かしているだけで、重要なテーマであるスペイン内戦による被害者を発掘し遺族とともに改めて埋葬するというもの。さらに、母、祖母、曾祖母と血の繋がりの人類学をベースにした壮大な物語さえも感じ取れるのだ。
DNAによる親子関係の調査という現代科学の精度にも注目したいし、生みの親・育ての親といった普遍的親子関係にアルモドバル特有の同性愛も取り入れ、レイプ被害の問題をもさらりと匂わせる。なんと贅沢な内容。
「歴史記憶法」「時間の感覚が無くなる」というアルトゥロの言葉にハッとさせられたのですが、祖先・家族の歴史というものには時間などない。そしてスペイン内戦のように、同族で殺し合うことの無慈悲さによって反戦メッセージも訴えてくる。
分断という言葉も流行した日本ですが、同時代の主義主張や世相とともに歴史も学ばないととんでもないことになりそうな予感。ともかく基本は母と子の愛!すべて繋がっていることを教えてくれた。
音楽も素晴らしかった。27歳の若さで亡くなったジャニス・ジョプリンの「Summertime」も聴けるのですが、なぜか「マザー」と歌ってたような気がした・・・
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