「歴史に包まれて」パラレル・マザーズ Yoshiyuki Kobayashiさんの映画レビュー(感想・評価)
歴史に包まれて
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この作品で観るのは, 歴史の包容力だ. 赤子の取り違いというシナリオと思うと, 頭の中で参照したくなる他作品も少なくない. こういった筋書きの映画は, 運命のイタズラで苦しむ家族をさいご救済する設定が肝である. 本作品では, その手を差し伸べてくれるのは”歴史”だ. iPhoneやgoogleが最初の相談相手だったとしても. 私たちが, 無関心になりつつある歴史だ. “生物的”には母子ではないふたりが,ともに虐殺の記憶を消化する機会に立ち会うことを許してくれる. 家族という概念を拡張してくれる歴史の振る舞いを可視化してくれる作品だった.
新たな命を授かる経験をするふたりの母. このふたりが, 一世代ほどギャップがあるのも本作の見所である. 早すぎる受胎へのとまどいや自国の過去への無関心さが垣間見える描写は, こちらも少し肩身が狭くなってしまった. 歴史への無関心さが及ぼす可能性を想像することにも本作は示唆的だった. ここで並行(パラレル)なのは, ひとりの赤子に寄り添うふたりの母のことだけではない. 多様な表裏関係を探しながら鑑賞してみてほしい
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