「【今作は人間のアイデンティティーとは何かを問う作品であり、家族の愛を伝える映画でもある。 真の家族愛とは、血縁が無くても形成されるのである。 偏見と差別の愚かさを描いた作品でもある。】」ある男 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【今作は人間のアイデンティティーとは何かを問う作品であり、家族の愛を伝える映画でもある。 真の家族愛とは、血縁が無くても形成されるのである。 偏見と差別の愚かさを描いた作品でもある。】
ー 身内に犯罪者を出した家族が、その町に住めなくなり、失踪するという話は時折聞く。死刑になった男を父に持つ”ある男”(窪田正孝)の苦悩は想像が付かない。
彼の言葉”朝起きて、鏡を見ると、父がいるんですよ・・。”
キツイよなあ・・。”ある男”は、何も悪くないのに・・。-
◆感想
・今作は、アイデンティティーとは何かを見る側に問いかけてくる作品である。
”名前、肩書を越えた自分自身の社会的存在意義とは何か”・・をである。
・それと共に、人は何故、差別・偏見をするのかをも問いかけてくる作品である。
ー 死刑になった父を持つ”ある男”の心の傷を作った一因であるだろうし、在日韓国人への差別。(今作では、亡くなった夫”大佑”の身元調査を妻、里枝(安藤サクラ)から依頼された弁護士の城戸(妻夫木聡)である。
又、随所で流れるヘイトスピーチをする愚かしき人々の罵声と姿。-
・文房具屋を営む、里枝が2歳で亡くした娘の事を思い出しながら、製品を整理している所にフラリと現れた”大佑”。
二人は恋に落ち、娘も出来、幸せな生活を送っているが(”ある男”が、初めて得た家族であり、安穏の日々であったであろう。)林業を営みとした”大佑”は不慮の事故で命を落とす。
一年後、”大佑”の兄、谷口恭一(眞島秀和)は”大祐ではない”と言い、DNA鑑定の結果、別人と分かるシーン。
ー 里枝の”誰と暮らして来たんでしょう・・。”と言う哀しみの言葉と共に、城戸の調査で”大佑”の本当の名が分かる過程が、サスペンスフルで引き込まれる。
戸籍、肩書の軽さ、アイデンティティーの重さを、収監された柄本明が飄々と演じている事で、観る側に上手く伝えてくる。ー
・本当の大祐(仲野大賀)は温泉旅館を営む兄、谷口恭一とも上手く行っておらず、恋人(清野菜名)にも告げず、失踪していた事が分かるシーン。
ー 兄も、何気ない言葉の端々から、偏見を持った男であることが分かる。ー
・城戸も、妻のスマホに送られてきた知らない男のメッセージを見ても、妻には何も言わない・・。
<今作は、人間のアイデンティティーとは何かを問いかけてくる作品であり、偏見、差別を考えさせられる作品であるとともに、真の家族の愛を見る側に伝える映画でもある。
真の家族愛とは、血縁が無くてもキチンと形成されるのである。
人を偏見で見たり、差別する愚かさを描いた作品でもある。>