声もなくのレビュー・感想・評価
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ありがちな擬似家族物ではない
主人公のテインは、口が利けない。
当然、テインを演じるユ・アインには、ただの一言もセリフはない。
それでも表情と身振りで、純粋で温かくかつ粗野で教養の欠片もないキャラクターを見事に体現してた。
テインの不幸な境遇については殆ど語られないので、何故口が利けなくなったのかや幼い妹の出生など、色々と謎は残るのだけれど…
誘拐された少女とテインたちの関係性も、何となく予想してたものとは少し捻ってあって、単なる孤独な者たちのエモい擬似家族ストーリーではないのも良かったな。
コンパクトな時間の中で語るシンプルな悲劇
皮肉を重ねた巧さ
韓国の闇社会をネタにしたコメディ。
コメディはコメディでも、完璧なブラック・コメディ。
テインは耳は聞こえるが喋れず、妹ともども元々孤児で、犯罪組織の下請けをやっているチャンボクに投げやりに育てられ、まともな教育どころか善悪基準が欠落しているというキャラ。
誘拐された子・チョヒは、早くうちに帰りたいが、どこか自分の運命を受け入れて達観しつつも、殺されるよりはマシと見張りのいうことをきこうとしているうちに、いわゆる「ストックホルム症候群」らしき感じでテインに懐き、同情する。
チョヒによってテイン(とその妹の二人)が、人間性を得ていく過程はなかなかの見もので、しかし生活のために行っているテインの仕事は死体の処理というアンバランスさ。
ここに、笑えない笑いがある。
テインにとっては不運が雪だるま式に増えていく展開ではあるし、作中ラストは投げっぱなしなものの、絶対にテインは捕まるし、妹と離ればなれになる未来しか見えず、やはり笑えない。
だが、チョヒとテインの関係性の黒い笑いと、テインを演じるユ・アインの台詞なしの演技力を見るのが本作のポイントなのかな、と。
そして、絶望の中に見える空の色の美しさ。
綺麗な田園風景などの画面設計の妙。
皮肉を何重にも乗せた内容に、緻密な計算を感じました。
ユ・アインはいいけど、、、
素晴らしい作品の包容力
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