声もなくのレビュー・感想・評価
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見てる人は心の中で言葉をさがす。
ここ最近、話す事や聞く事に障害を持つ人を主人公にしたのアジア映画をよく見る。俯瞰するとマイノリティを描く社会派映画が増えているという事になるんだが、映画としては主人公の「不自由さ」が見る人に感情移入しやすい状況を作るわけで、映画のネタとしてなかなか優れている題材である。
貧しいアジアの田舎では死体処理も、人身売買も当たり前のように仕事として成り立ち、そんな主人公の普通の日常をわりとあっけらかんと描いてる所が本作の良い所ではないかと思う。メイキングで監督が暗い話だから明るく仕上げる様に意識したと語っていた。そう言えば女性の監督も増えたなぁ。
主役男子の何処の高校の野球部にも居そうな顔もよい。
拐われた女の子がまたきちんとした家の良い子でそのコントラストも良いのだ。
届くことのない声の行方。
韓国からまた凄いのが来た。重くて残酷で絶望的で目を伏せたくなるようなストーリー。それなのに何故か心があったまってしまう瞬間がある。
闇社会の末端で相棒と共に死体処理を生業とする口がきけない青年テイン。身代金目的で誘拐された少女チョヒを押し付けられ、隠れるように暮らす茂みの家で妹と3人。不思議な共同生活が始まる。
階級社会からはじかれた者達の行く末。下っ端で学もないテインは誰に逆らうこともできない。貧困が招く負のループから永遠に抜け出せない。クスっと笑えるユーモアを盛り込みながら物語が加速してゆく。チョヒはテインに心を許したのか。それとも身を守るため本能的にそう見せたのか。結局うさぎの仮面は最後まで着けたままだったのかもしれない。誰の耳にも心にも届かない声の行方。テインが走り出した先。どの道を選んでも地獄へ辿り着く。
この重厚さを99分で撮り切った新人ホン・ウィジョン監督に敬礼したい気分です。チョヒと妹がシンクロしてゆくとこや血の花には痺れました。女性ならではの感性だったかもしれないですね。
残念だったのは相棒の展開があまりにも雑だったこと。あそこまできてあれはさすがにどんくさ過ぎる。
<声「が」なく>ではなく、<声「も」なく>・・・の意味は?
黒社会や黒と白の狭間のドラマをサラリと自然体でユーモア含んで描けるなんて、さすがは韓国映画。映像・風景もとっても叙情的で良い!行間も描く感じもいいなぁ・・・でも、「惜しい!」観賞後の第一印象でした。かなり微妙な仕上がりかなぁ〜、なんて思ってたんですよ。ストーリーが空中分解しちゃってるなぁ、女性警官のアレはちょっとなぁ〜、辻褄合わせが多いなぁ・・・・・なぁんて僕の中では評価が低かったんです。ですが、一つだけ引っかかることが、しっくりこないことがありまして・・・、
「声もなく(原題:Voice of Silence)」
この題名は一体なんなのだろう?なぜこの題名なのだろう?と。
端的に考えれば主人公の境遇にフォーカスしての題名?だとするとこのストーリーはしっくりこないのです。この違和感があるので「いまいち」って思ってたんですよね。ですが・・・「声もなく」・・・声もなく「何?」なんだ?、、、原題は直訳で「沈黙の声(で良いのかな?)」「音なき声」なんてことになるのかなぁ?・・・と考えていたら、なんだか「あぁ、そういうことかも!」ってしっくりくることが増えていったのです。主人公の境遇のみフォーカスなら<声「が」ない>なのでは無いかなぁ?<声「も」なく>とは主人公のみの話ではなく、音もなく何かが進む、声もなく進行していく様なのではないか?と。
人は結局は100%分かり合えないと思ってます。いくら何億個の言葉を紡いでも、会話をしたとしてもです。経験がないからかもですが、以心伝心なんてあり得ないし、誠意を持って接したって伝わらないことあるし、「こうあってほしい」と思う世界が実現するなんて、「自分の気持ちは相手に十分伝わっている」なんてファンタジーじゃん?って思ってます。(夢がないですがw)また、人間は自分が欲するもののためであれば、戦略も練るし嘘もつく。
本作はその人間社会の「分かりあえる?」って部分を、物理的に「声が出せない」主人公の境遇と「声なき声となっている心情」とを重ねつつ描いているのではないだろうか?なんて思ったのです。それも、障害がある人が歩んでしまっている悲しい日常も描きながら。ですから第一印象とはガラリと印象が変わり「うまいなぁ〜って感嘆したのです。まぁ、深読みしすぎなんだろうとは思うのですが(笑)
声があれば分かり合えるのだろうか?彼に声があり言葉を交わせていたら結末は変わっていたのだろうか?自分の気持ちを、願っていたことを伝えていたら、自分の境遇を伝えられていたら、、、。障害の有無は関係なく利害の一致が全てなんでしょうね。主人公が生活できていたのも、あの仕事があったのも利害の一致。主人公と女の子の利害はどこまで一致していたのか?けど、ファンタジーではない現実を巧みに描いた作品と言えるのではないでしょうか?
叙情的なカメラワークや、俳優陣の演技でしっとりとしたヒューマンドラマのテイストで見せながらも、えぐい現実を見せつける作品なのではないでしょうか?
ただ、やっぱり女性警官のあの展開や、相棒の行く末の辻褄の合わせ方がどうにも受け入れられなくって、さらにラストシーンは・・・韓国映画お得意の涙腺攻撃が好きになれないんだよなぁ〜ww
でもでも、改めて韓国映画すごいです。良い作品だと思います。
まぁ、深読みしすぎだろうなぁww
韓国映画に一つ傑作が増えた
最高に面白い作品でした。
本作はここ最近の韓国映画の問題意識を共有していて、ジェンダーや貧困格差の問題が描かれています。
特に、おそらくテインの富裕層への憧れの象徴であるスーツをラストで学校の先生に誘拐犯と叫ばれ、走って逃げる際にジャケットを脱ぎ捨てますが、富裕層から拒絶される瞬間のようで切なかったです。
『バーニング』のラストでもユ・アインはダッシュしますが、『バーニング』は富裕層に対するプロテストの気概に溢れていましたが、『声もなく』はただ拒絶され逃げ去るのみであり、もっと悲しいラストでした。
「シベールの日曜日」という映画を思い出した。
作家の中野翠が激賞しているので、鑑賞してみた。
ヤクザの下請けで死体処理の仕事をしている話すことができない障害を持つ青年と誘拐された親からの愛情を受けていないと思われる少女との交流を描いた映画である。観終わって激賞に値する映画だろうかが私の正直な感想である。社会の最底辺で暮らす若者の話でなので暗いかと思ったら、色調は明るく時に写し出される自然も優しい。伴奏する音楽が魅力的だ。50年前に観た「シベールの日曜日」を思い出したけど、内容は忘れてしまった。青年と少女の心のふれあいを描いたことしか覚えていない。
血液型で値段が違う?
あの妹(ムンジュ)を見た時には、誘拐された少女(チョヒ)は一体どうなるのかと心配しましたが。
洗濯のシーンがこんなに心に残る映画は私は初めてです。
少女と妹の髪型が入れ替わるのもいいですね。
あの怪しい男が本当に警官だったとは。
映像もきれいだし、不思議と血のにおいがしない。
血痕を使って少女が花の絵をかくところとか、センスを感じました。
見るのを迷っているかたには、是非おすすめしたい作品です。
軽く描いてはいるけれど…
テーマがおもすぎるでしょ…。障害がありながら底辺で必死に生きる人達に誘拐に人身売買に殺人に、とこれをサラッと描くことが怖い。人生の歯車ってちょっとずれ出すとどんどん転がっていってしまうのが悲しすぎる。静かな展開のなか、口が聞けないけどひしひしと感情が伝わってくる演技に泣けた。
2人の揺れ動く感情に心が乱される
韓国映画の子役の演技はレベルが高い。児童虐待や誘拐の映画だとそれが際立つ印象だ。本作もそう。
マフィアの下請けで死体処理をしている2人に、誘拐した少女を預かるよう依頼(命令?)が来る。この少女と一緒に暮らすことになった口のきけない男と幼い妹の生活を描いた物語だ。
疑似家族のような関係が続く中、いつの間にか信頼関係ができてって話になると思っていた。それで最後泣かすんでしょ?と。ある意味間違ってはいないのだが、テイストは予想と大きく異なっていた。
疑似家族のようなのに、本当の家族ではないという点を最後までブレさせなかった。だから、彼らの行動が不可解に思えることも多い。どっちなんだよ?と。今の生活を続けるのか元の生活に戻るのか、どちらにも揺れる2人の演技は見もの。ユ・アインは声を出さない演技がゆえにとても深みのある表情を見せてくれた。でもやはり本作の見どころはチョヒ役のムン・スンアだと思う。子どもらしい表情と母親のような態度、聡明なのに無邪気、その危ういバランスの上で成り立つ素晴らしい演技だった。ラストに見せる複雑な感情を抱えた表情が切なくて仕方ない。やはり韓国の子役はレベルが高い。
ただし、最後がキチンと終わらないところが消化不良。いや、そんなもんなのかもしれないけど、彼らのその後が気になってしまう。個人的な好みだが、そこまで高い点はつけられなかった。
誘拐された子の将来が。。。
殺害現場に居ながらも平静でいたり、親への不信感。ラストの決断含め、とてもスレてしまうか、それ故めちゃキレものになるか。。。なんにしても関わりあった大人が悪いんですけどね。。。
声は届かない
ユ・アイン× ユ・ジェミョン×ホン・ウィジョン「声もなく」を観る。社会から不必要とされ、端に追いやられた人たちのもがきとささやかな抵抗を切なく、愛おしく、そして残酷に描いた物語。
ユ・アインとユ・ジェミョンとという演技派2人が激闘して生まれるケミストリーが快感でもあり、受け止めるのにちょっと疲れるという副作用もあったりする。ユ・ジェミョンは相変わらずのいぶし銀で、ユ・アインは「地獄が呼んでいる」「バーニング 」を凌駕する凄まじい演技で圧倒された。
チョヒは先生に何を耳打ちしたんだろう、観終わってから、ずっと考えている。
信用出来る人
卵の移動販売を表の顔にしつつ裏では死体処理の仕事をしている喋れない男に、誘拐された少女が預けられる話。
裏社会の死体処理屋さん2人組に押し付けられた11歳の少女を残したまま、押し付けた当人は処刑されてしまい、更に押し付けられた喋れない男とその妹と誘拐された少女の3人の暮らしが始まって行くストーリー。
死体処理のこととか誘拐のこととか、少女も事態をわかりつつ日々を過ごしていく様は何だか滑稽であり和やかであり面白い。
シリアス一辺倒でもないし、男と少女の機微をみる話としては良かったけれど、ラストはこの流れならもう一歩先までみせて欲しかった。
韓国の闇…
韓国は既に日本を越えている分野がかなりある。経済の発展と引き替えに、貧富の差が生まれていくのは、世の常。韓国の闇の一部を上手く表現していたと思うけど、終わり方が…😓十人十色だが、私にはフラストレーションが残った。
ほのかに切ないドラマ
死人を処理する闇仕事をする、声を出さない兄貴が頑張って少女と過ごす奮闘ドラマだ。なんか不思議な内容だったが、切なさが残る映画。
面白いか、面白くないのか狭間の微妙さ加減があった。
いえるのは寂しい物語です。
ありがちな擬似家族物ではない
主人公のテインは、口が利けない。
当然、テインを演じるユ・アインには、ただの一言もセリフはない。
それでも表情と身振りで、純粋で温かくかつ粗野で教養の欠片もないキャラクターを見事に体現してた。
テインの不幸な境遇については殆ど語られないので、何故口が利けなくなったのかや幼い妹の出生など、色々と謎は残るのだけれど…
誘拐された少女とテインたちの関係性も、何となく予想してたものとは少し捻ってあって、単なる孤独な者たちのエモい擬似家族ストーリーではないのも良かったな。
コンパクトな時間の中で語るシンプルな悲劇
死体処理など非合法な仕事を請け負い生計を立てる口のきけない青年と、彼が預かることになった親に身代金を払ってもらえない少女のふれあい。
温かい感情を知ることになるが、青年に未来はなかった。悲劇しかなかった。
この青年どこかで見たことがあると思っていたが、「バーニング 劇場版」のユ・アインだったのですね。まったく別人だった。これが役者魂というヤツ。
そしてもうひとつ特筆すべきは映像美。
素晴らしい色彩と構図で田園風景が情景となった。
これでもかとたたみかけてくる作品が多い昨今の韓国映画にあって、99分というコンパクトな時間の中で語られるシンプルな悲劇。賛否両論ありそうだけど自分は好きだった。
皮肉を重ねた巧さ
韓国の闇社会をネタにしたコメディ。
コメディはコメディでも、完璧なブラック・コメディ。
テインは耳は聞こえるが喋れず、妹ともども元々孤児で、犯罪組織の下請けをやっているチャンボクに投げやりに育てられ、まともな教育どころか善悪基準が欠落しているというキャラ。
誘拐された子・チョヒは、早くうちに帰りたいが、どこか自分の運命を受け入れて達観しつつも、殺されるよりはマシと見張りのいうことをきこうとしているうちに、いわゆる「ストックホルム症候群」らしき感じでテインに懐き、同情する。
チョヒによってテイン(とその妹の二人)が、人間性を得ていく過程はなかなかの見もので、しかし生活のために行っているテインの仕事は死体の処理というアンバランスさ。
ここに、笑えない笑いがある。
テインにとっては不運が雪だるま式に増えていく展開ではあるし、作中ラストは投げっぱなしなものの、絶対にテインは捕まるし、妹と離ればなれになる未来しか見えず、やはり笑えない。
だが、チョヒとテインの関係性の黒い笑いと、テインを演じるユ・アインの台詞なしの演技力を見るのが本作のポイントなのかな、と。
そして、絶望の中に見える空の色の美しさ。
綺麗な田園風景などの画面設計の妙。
皮肉を何重にも乗せた内容に、緻密な計算を感じました。
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