声もなくのレビュー・感想・評価
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住む世界が違うから
テインは死体処理をするのが当たり前の日常で、チョヒは学校で勉強するのが当たり前の日常。だから、本来ならば彼らは社会で交りあうことがない関係です。仮にひょんなことから交じりあったとしても、住む世界があまりにも違う者達の関係って最終的には悲劇しか生まないんですよね。テインもチョヒも生きる為にそうするのであって、善悪も何もありません。
社会には、社会階層、都市部と地方、障害の有無、年齢、ジェンダーなど、多くの埋めがたい隔たりがあって、そんな厳しい現実をテインの視点から示唆している様に感じました。
割とありがちな物語だったので、もう少し意外性があったら、良かったですね。
切ないね、、
【隔てるもの】
この作品のエンディングの場面を観て、ふと......と言うか、よく考えてみて、背筋がぞっとするような感覚を覚えた。
僕たちのモラリティの外側で生きているからと云って、優しさや道徳心がないということでは決してないはずだ。
そして、いつの間にか、杓子定規でしか考えられなくなっている僕たちの社会。
(以下ネタバレ)
まともな教育など受けたことがなく、非合法な仕事をせざるを得ないテイン。
口がきけないというのは、逆らう術などないということのメタファーなのだろう。
しかし、優しさは人質のチョヒとの交流となり、子供たちを救うことにもなる。
チョヒを学校に送り届けるが、チョヒが学校の先生につぶやく”何か”は、僕たちの社会の現実だ。
決してチョヒが悪いのではない。
もし、自分がチョヒの立場だったら、同様にするかもしれない。
何かで隔てられたあちら側とこちら側。
人間の根っこの部分は優しさ等で繋がっていても、厳然と立ちはだかる価値観の相違があるのだ。
テインと妹との心温まる交流に対して、迎えに来た実の両親と兄に一礼をしなくてはならないチョヒ。
僕たちの世界には、相手を理解しようという気持ちよりも、もっと隔てるものが思いのほか多くあるのだ。
とても示唆的な作品だと思う。
見てる人は心の中で言葉をさがす。
ここ最近、話す事や聞く事に障害を持つ人を主人公にしたのアジア映画をよく見る。俯瞰するとマイノリティを描く社会派映画が増えているという事になるんだが、映画としては主人公の「不自由さ」が見る人に感情移入しやすい状況を作るわけで、映画のネタとしてなかなか優れている題材である。
貧しいアジアの田舎では死体処理も、人身売買も当たり前のように仕事として成り立ち、そんな主人公の普通の日常をわりとあっけらかんと描いてる所が本作の良い所ではないかと思う。メイキングで監督が暗い話だから明るく仕上げる様に意識したと語っていた。そう言えば女性の監督も増えたなぁ。
主役男子の何処の高校の野球部にも居そうな顔もよい。
拐われた女の子がまたきちんとした家の良い子でそのコントラストも良いのだ。
届くことのない声の行方。
韓国からまた凄いのが来た。重くて残酷で絶望的で目を伏せたくなるようなストーリー。それなのに何故か心があったまってしまう瞬間がある。
闇社会の末端で相棒と共に死体処理を生業とする口がきけない青年テイン。身代金目的で誘拐された少女チョヒを押し付けられ、隠れるように暮らす茂みの家で妹と3人。不思議な共同生活が始まる。
階級社会からはじかれた者達の行く末。下っ端で学もないテインは誰に逆らうこともできない。貧困が招く負のループから永遠に抜け出せない。クスっと笑えるユーモアを盛り込みながら物語が加速してゆく。チョヒはテインに心を許したのか。それとも身を守るため本能的にそう見せたのか。結局うさぎの仮面は最後まで着けたままだったのかもしれない。誰の耳にも心にも届かない声の行方。テインが走り出した先。どの道を選んでも地獄へ辿り着く。
この重厚さを99分で撮り切った新人ホン・ウィジョン監督に敬礼したい気分です。チョヒと妹がシンクロしてゆくとこや血の花には痺れました。女性ならではの感性だったかもしれないですね。
残念だったのは相棒の展開があまりにも雑だったこと。あそこまできてあれはさすがにどんくさ過ぎる。
<声「が」なく>ではなく、<声「も」なく>・・・の意味は?
黒社会や黒と白の狭間のドラマをサラリと自然体でユーモア含んで描けるなんて、さすがは韓国映画。映像・風景もとっても叙情的で良い!行間も描く感じもいいなぁ・・・でも、「惜しい!」観賞後の第一印象でした。かなり微妙な仕上がりかなぁ〜、なんて思ってたんですよ。ストーリーが空中分解しちゃってるなぁ、女性警官のアレはちょっとなぁ〜、辻褄合わせが多いなぁ・・・・・なぁんて僕の中では評価が低かったんです。ですが、一つだけ引っかかることが、しっくりこないことがありまして・・・、
「声もなく(原題:Voice of Silence)」
この題名は一体なんなのだろう?なぜこの題名なのだろう?と。
端的に考えれば主人公の境遇にフォーカスしての題名?だとするとこのストーリーはしっくりこないのです。この違和感があるので「いまいち」って思ってたんですよね。ですが・・・「声もなく」・・・声もなく「何?」なんだ?、、、原題は直訳で「沈黙の声(で良いのかな?)」「音なき声」なんてことになるのかなぁ?・・・と考えていたら、なんだか「あぁ、そういうことかも!」ってしっくりくることが増えていったのです。主人公の境遇のみフォーカスなら<声「が」ない>なのでは無いかなぁ?<声「も」なく>とは主人公のみの話ではなく、音もなく何かが進む、声もなく進行していく様なのではないか?と。
人は結局は100%分かり合えないと思ってます。いくら何億個の言葉を紡いでも、会話をしたとしてもです。経験がないからかもですが、以心伝心なんてあり得ないし、誠意を持って接したって伝わらないことあるし、「こうあってほしい」と思う世界が実現するなんて、「自分の気持ちは相手に十分伝わっている」なんてファンタジーじゃん?って思ってます。(夢がないですがw)また、人間は自分が欲するもののためであれば、戦略も練るし嘘もつく。
本作はその人間社会の「分かりあえる?」って部分を、物理的に「声が出せない」主人公の境遇と「声なき声となっている心情」とを重ねつつ描いているのではないだろうか?なんて思ったのです。それも、障害がある人が歩んでしまっている悲しい日常も描きながら。ですから第一印象とはガラリと印象が変わり「うまいなぁ〜って感嘆したのです。まぁ、深読みしすぎなんだろうとは思うのですが(笑)
声があれば分かり合えるのだろうか?彼に声があり言葉を交わせていたら結末は変わっていたのだろうか?自分の気持ちを、願っていたことを伝えていたら、自分の境遇を伝えられていたら、、、。障害の有無は関係なく利害の一致が全てなんでしょうね。主人公が生活できていたのも、あの仕事があったのも利害の一致。主人公と女の子の利害はどこまで一致していたのか?けど、ファンタジーではない現実を巧みに描いた作品と言えるのではないでしょうか?
叙情的なカメラワークや、俳優陣の演技でしっとりとしたヒューマンドラマのテイストで見せながらも、えぐい現実を見せつける作品なのではないでしょうか?
ただ、やっぱり女性警官のあの展開や、相棒の行く末の辻褄の合わせ方がどうにも受け入れられなくって、さらにラストシーンは・・・韓国映画お得意の涙腺攻撃が好きになれないんだよなぁ〜ww
でもでも、改めて韓国映画すごいです。良い作品だと思います。
まぁ、深読みしすぎだろうなぁww
韓国映画に一つ傑作が増えた
最高に面白い作品でした。
本作はここ最近の韓国映画の問題意識を共有していて、ジェンダーや貧困格差の問題が描かれています。
特に、おそらくテインの富裕層への憧れの象徴であるスーツをラストで学校の先生に誘拐犯と叫ばれ、走って逃げる際にジャケットを脱ぎ捨てますが、富裕層から拒絶される瞬間のようで切なかったです。
『バーニング』のラストでもユ・アインはダッシュしますが、『バーニング』は富裕層に対するプロテストの気概に溢れていましたが、『声もなく』はただ拒絶され逃げ去るのみであり、もっと悲しいラストでした。
「シベールの日曜日」という映画を思い出した。
血液型で値段が違う?
あの妹(ムンジュ)を見た時には、誘拐された少女(チョヒ)は一体どうなるのかと心配しましたが。
洗濯のシーンがこんなに心に残る映画は私は初めてです。
少女と妹の髪型が入れ替わるのもいいですね。
あの怪しい男が本当に警官だったとは。
映像もきれいだし、不思議と血のにおいがしない。
血痕を使って少女が花の絵をかくところとか、センスを感じました。
見るのを迷っているかたには、是非おすすめしたい作品です。
軽く描いてはいるけれど…
2人の揺れ動く感情に心が乱される
韓国映画の子役の演技はレベルが高い。児童虐待や誘拐の映画だとそれが際立つ印象だ。本作もそう。
マフィアの下請けで死体処理をしている2人に、誘拐した少女を預かるよう依頼(命令?)が来る。この少女と一緒に暮らすことになった口のきけない男と幼い妹の生活を描いた物語だ。
疑似家族のような関係が続く中、いつの間にか信頼関係ができてって話になると思っていた。それで最後泣かすんでしょ?と。ある意味間違ってはいないのだが、テイストは予想と大きく異なっていた。
疑似家族のようなのに、本当の家族ではないという点を最後までブレさせなかった。だから、彼らの行動が不可解に思えることも多い。どっちなんだよ?と。今の生活を続けるのか元の生活に戻るのか、どちらにも揺れる2人の演技は見もの。ユ・アインは声を出さない演技がゆえにとても深みのある表情を見せてくれた。でもやはり本作の見どころはチョヒ役のムン・スンアだと思う。子どもらしい表情と母親のような態度、聡明なのに無邪気、その危ういバランスの上で成り立つ素晴らしい演技だった。ラストに見せる複雑な感情を抱えた表情が切なくて仕方ない。やはり韓国の子役はレベルが高い。
ただし、最後がキチンと終わらないところが消化不良。いや、そんなもんなのかもしれないけど、彼らのその後が気になってしまう。個人的な好みだが、そこまで高い点はつけられなかった。
声は届かない
信用出来る人
韓国の闇…
ほのかに切ないドラマ
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