「<声「が」なく>ではなく、<声「も」なく>・・・の意味は?」声もなく バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
<声「が」なく>ではなく、<声「も」なく>・・・の意味は?
黒社会や黒と白の狭間のドラマをサラリと自然体でユーモア含んで描けるなんて、さすがは韓国映画。映像・風景もとっても叙情的で良い!行間も描く感じもいいなぁ・・・でも、「惜しい!」観賞後の第一印象でした。かなり微妙な仕上がりかなぁ〜、なんて思ってたんですよ。ストーリーが空中分解しちゃってるなぁ、女性警官のアレはちょっとなぁ〜、辻褄合わせが多いなぁ・・・・・なぁんて僕の中では評価が低かったんです。ですが、一つだけ引っかかることが、しっくりこないことがありまして・・・、
「声もなく(原題:Voice of Silence)」
この題名は一体なんなのだろう?なぜこの題名なのだろう?と。
端的に考えれば主人公の境遇にフォーカスしての題名?だとするとこのストーリーはしっくりこないのです。この違和感があるので「いまいち」って思ってたんですよね。ですが・・・「声もなく」・・・声もなく「何?」なんだ?、、、原題は直訳で「沈黙の声(で良いのかな?)」「音なき声」なんてことになるのかなぁ?・・・と考えていたら、なんだか「あぁ、そういうことかも!」ってしっくりくることが増えていったのです。主人公の境遇のみフォーカスなら<声「が」ない>なのでは無いかなぁ?<声「も」なく>とは主人公のみの話ではなく、音もなく何かが進む、声もなく進行していく様なのではないか?と。
人は結局は100%分かり合えないと思ってます。いくら何億個の言葉を紡いでも、会話をしたとしてもです。経験がないからかもですが、以心伝心なんてあり得ないし、誠意を持って接したって伝わらないことあるし、「こうあってほしい」と思う世界が実現するなんて、「自分の気持ちは相手に十分伝わっている」なんてファンタジーじゃん?って思ってます。(夢がないですがw)また、人間は自分が欲するもののためであれば、戦略も練るし嘘もつく。
本作はその人間社会の「分かりあえる?」って部分を、物理的に「声が出せない」主人公の境遇と「声なき声となっている心情」とを重ねつつ描いているのではないだろうか?なんて思ったのです。それも、障害がある人が歩んでしまっている悲しい日常も描きながら。ですから第一印象とはガラリと印象が変わり「うまいなぁ〜って感嘆したのです。まぁ、深読みしすぎなんだろうとは思うのですが(笑)
声があれば分かり合えるのだろうか?彼に声があり言葉を交わせていたら結末は変わっていたのだろうか?自分の気持ちを、願っていたことを伝えていたら、自分の境遇を伝えられていたら、、、。障害の有無は関係なく利害の一致が全てなんでしょうね。主人公が生活できていたのも、あの仕事があったのも利害の一致。主人公と女の子の利害はどこまで一致していたのか?けど、ファンタジーではない現実を巧みに描いた作品と言えるのではないでしょうか?
叙情的なカメラワークや、俳優陣の演技でしっとりとしたヒューマンドラマのテイストで見せながらも、えぐい現実を見せつける作品なのではないでしょうか?
ただ、やっぱり女性警官のあの展開や、相棒の行く末の辻褄の合わせ方がどうにも受け入れられなくって、さらにラストシーンは・・・韓国映画お得意の涙腺攻撃が好きになれないんだよなぁ〜ww
でもでも、改めて韓国映画すごいです。良い作品だと思います。
まぁ、深読みしすぎだろうなぁww