「白石和彌監督の今後を憂う」死刑にいたる病 CINE LADAさんの映画レビュー(感想・評価)
白石和彌監督の今後を憂う
(白石和彌監督愛が強いためやや辛口となります。)
何故こうなってしまったのか。主人公がFラン大学に入学して本人も家族もそう思っただろう。そして映画を観終えた私も思ったのだ。どうしてこうなってしまったのか。
映像はよい。アクリル板に写るシリアルキラー榛村と大学生・雅也の距離感が美しい。花弁のように散る事後の爪が美しい。阿部サダヲ感が鳴りを潜めた狂気の演技も良い。それなのに、何故こんなに私は落ち込んでいるのだろう。
比較的予定調和に進むストーリーも、別にそこまで悪いわけじゃない。むしろ最後のシーンはなかなかに鳥肌がたつ。宮﨑優という役者を知らなかったが、間違いなく光っていた。血を舐めるシーンは全く理解に値しないが、それは彼女のせいではない。
実はもう分かっている。このストレスの原因は金山なんだ。冒頭から「この人、重要人物です!覚えておいてね!!」と、地上波初登場の映画のように下世話な説明テロップを従えて(のように見える)堂々と登場。この見るからに意味ありげな男が恐らくストーリーに絡みつつ、そして恐らくは犯人でないという所まで容易に想像できてしまう。だから殺人現場で女性が泣いて拝んでいたと聞いても「あー…」。(CGで若返ったTikTokのようなチープな映像内に)長髪の子どもが出てきても「あー…」。いかにもなエンジニアだし、車に乗ってるロン毛も悪目立ちして仕方がない。雅也に告白する大切な演技も相変わらず不完全燃焼。いやはや、こんなサスペンス楽しくないよ。
「監督うっ!うちの岩田のシーンを増やしてくださいよぉ」
なんて妄想が止まらない。そうでも思わないと、あの違和感が収まらない。大丈夫?日本のエンターテイメントは大丈夫なの??
孤狼の血LEVEL2あたりから、大人の事情を消化しきれずにいる白石監督の姿にヤキモキする。彼の作品にEXILEや乃木坂は必要なのか?新作が発表される度に映画館に向かっているのだけれど、そろそろサブスクでの公開を待つ方向の切り替えてもイイのかしれないな…。悲しい。