「面白かったのですが、着地に問題があったのでは…」死刑にいたる病 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白かったのですが、着地に問題があったのでは…
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後に読んで下さい)
もちろん何の落ち度もない人を殺害するなどあり得ないと当然私も考えている1人です。
しかし映画としては好みの部類に入る題材だったと思われます。
榛村大和(阿部サダヲさん)の殺害動機も、その秩序性も含めて、生い立ちから腹には落ち理解出来ました。
主人公の筧井雅也(岡田健史さん)の行動や心情も、父(鈴木卓爾さん)や母(中山美穂さん)との不穏な関係性から理解出来ました。
榛村大和に雅也が心情的に巻き込まれて行くのにも説得力があったと思われます。
しかし、最後の最後に加納灯里(宮﨑優さん)が雅也に近づいた動機に関しては私にはほとんど納得感がありませんでした。
加納灯里はどちらかというと榛村大和に殺害された被害者女性たちに立ち位置が近い印象を受けていました。
そんな加納灯里が果たして榛村大和に対して共感したりするのでしょうか?
加納灯里の内面はほとんど描かれていません。
だからこそラストでの驚きがあるだろうとの演出だった(あるいは原作通り?)かもですが、逆に加納灯里の行動に違和感しか残りませんでした。
これは物語を閉じる最後の場面としては致命的な欠点なのではないでしょうか。
私は、ラストを加納灯里との関係で終わらせるなら、加納灯里をもっとしっかり描くか雅也と共に榛村大和に関わらせる必要があったと思われました。
この加納灯里に関する違和感がなければ4.5点以上の傑作になったのではとは思われました。
阿部サダヲさんの名演を含めてそれぞれのキャストの皆さんの演技は素晴らしかったと思われます。映像表現も素晴らしかったと思います。
それだけにラストが個人的には悔やまれると思われました。
この加納灯里をほとんど描けてない問題は、榛村大和が若い女性に対してほとんどステレオタイプにしか理解出来ていない問題にも通じているのかもしれません。
この映画の長所と弱点がラストに計らずも現れてしまったとすれば、ラストもこの映画の語るべき重要な箇所なのかもしれないな、とは一方で思われてはいます。