劇場公開日 2022年5月6日

  • 予告編を見る

「阿部サダヲの狂気と岡田健史の鬱屈。綱渡りを最高に成功させたみたいな作品」死刑にいたる病 甘酒さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5阿部サダヲの狂気と岡田健史の鬱屈。綱渡りを最高に成功させたみたいな作品

2022年5月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

観終わってからも数時間、ちょっとした興奮状態が続く。j
それほどの作品であった。

残虐なシーンも多く、心理的に追い詰められるような描写もあるのだが
そういう問題ではない。
それは、まるで観進めていくうちに、
細い木綿の糸と鋭いナイロンのテグスが絡まって、こんがらがって
どうにもこうにも全く解けなってしまうような。
それを解くために時間も忘れてぐちゃぐちゃに固まった糸の絡まりを
痛くなってくる指先でずーーーっとほぐしているような∙∙∙
少し絶望に似たような鬱屈とした世界がジワジワと広がっていく様は、さすが白石監督だと思わされた。

拘置所【榛村(阿部サダヲ)】とこちらの世界【雅也(岡田健史)】を
線引く面会の衝立のアクリルに重なり写る互いの顔の使い方、
無機質で澱んだ空気感に包まれた面会室という密室の狭い世界から
語られ、探られ、想像しては繰り広げられる
歪んだ人間たちが創り出す現実世界の広がりが恐ろしいこと極まりない。

前半で植え付けられる【榛村】の狂気と相反する普遍性に
「ひょっとして∙∙∙」という思いから
後半に回収されるさまざまな
「え?こいつが?!」
「え?まさか∙∙∙あの人も?!」
「あ!アイツなのか?!」
「え∙∙∙そういうことだったのか∙∙∙」
キリがないほど引き込まれ翻弄されるのです。

観終わった後、
なんだかグラグラの綱渡りを見事に大成功で渡り終わったような
意味不明な解放感みたいな気持ち良さが襲ってきた。

そして最後に思うのです。
なるほど。
タイトル通り『死刑にいたる病』だな。と。

素晴らしい作品でした。

甘酒