劇場公開日 2022年4月1日

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「この作品は宝田さんから若い人に宛た遺言状 完璧な終活おそれいりました!」世の中にたえて桜のなかりせば カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5この作品は宝田さんから若い人に宛た遺言状 完璧な終活おそれいりました!

2022年4月19日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

水曜日のサービスデー。
乃木坂だとか欅坂なんかは知らんけど、神楽坂はまあまあ知っている。
銀座の丸の内東映シアターには還暦組が前の方に数名と後ろの方に現役高校生が8名ほど。
ペンとペンの校章でしたから、陸の王者慶応です。日吉から来たの?
乃木坂46のれんたんこと岩本蓮加ちゃんお目当てで来たのでしょうね。
彼氏のお供の女子もひとりいた。三田から来たの?
高校生は1000円ポッキリ。
現役高校生は幕が降りたあとすぐに立ち上がるものはひとりもいなんだ。
映画に感動して茫然自失というより、優しさに溢れた映画に骨抜きにされちゃった?

不登校だけど終活アドバイザーのアルバイトはしている吉岡咲。
不登校になったきっかけは国語教諭の南雲先生(土居志央梨)が悪い生徒たちからイジメられ、自信をなくして退職してしまったことを受けて、意地の悪い同級生たちに憤慨し、咲自身がこんな学校なら行く必要ないと決めたみたい。ひとりアパートでニート生活を送る南雲先生を見守り、支援する。ヤングケアラーだった。ビーフシチューが美味しそうでした。
南雲先生と咲の関係は教師と生徒というより、シスターフッドそのもの。実は、南雲先生役の土居志央梨お目当てでした。岩本蓮加とのお芝居はとても仲のいい姉妹のようで、微笑ましかった。部屋も酒瓶とタバコの吸殻の山かと思ったら、それほど荒んだものてはなく、350ccの缶ビールをささっと片付ければこぎれいになる程度でした。

宝田明さんはこの映画を自らプロデュース。あと少しだったのに公開に間にあわずに旅立たれました。試写での舞台挨拶に車椅子で駆けつけ、その3日後に誤嚥性肺炎で亡くなりました。ウィキペディアを読むと、父親は満鉄の技術者。戦後引き揚げ船でハルピンから日本へ。新潟は岩船の寳田家の菩提寺に居候し、中学校に通います。咲に私も不登校でしたと話し始める。でも、咲とは違い、勉強したかったが出来なかったと。それは戦中戦後だったから。兄二人は兵隊にとられ、帰って来なかったと咲に話す。実際、三人の兄がいた。

ウィキペディアのエピソード欄には、
満州時代、ソ連軍の満州侵攻(終戦の4日前に宣戦布告)による混乱の際、ソ連兵に右腹を撃たれる。元軍医に弾丸を摘出してもらったが、その弾丸はハーグ陸戦条約で禁止されていたダムダム弾(蘇る金狼:大藪春彦で初めて知った!)だった。その経験に加え、満鉄の社宅にいた女性がソ連兵にごうかんされる現場を目撃した経験などがトラウマになり、現在もロシアには嫌悪感を抱いている。実際に、ロシア映画やロシアバレエは「吐き気を催すほど許せない気持ちが湧き起こる」ために観たくないと語っている。
そんな、宝田明さんがロシアがウクライナ侵攻をしている最中に亡くなるとは、なんという巡り合わせなのだろうか。
戦後、スカウトされて映画俳優の道を進まれたが、この映画を観ると、本当は父親のような技術者を夢見ていたのかもしれない。河川の技術者役にそれを語らせたように思う。自分がやりたかった仕事ではないと言わせる場面。自分の天職と思える仕事に就ける人の方が圧倒的に少ないのだから、市井の人々に対する暖かさを感じる。戦後の映画スターにはスカウトされて嫌々俳優になった人も珍しくない。贅沢言ってる場合じゃなかったと回想する人も多い。
妻役の吉行和子さんはほぼ同い年。かつて勉強を教えてもらった車イスの妻のために、咲の同級生の男の子の力を借りて、思い出の🌸を再現する話しは優しさに溢れている。吉行和子も土居志央梨も同じ国語教師同志というのもよかった。
私がこの映画を通して、宝田明さんからもらったメッセージは
1.戦争反対
2.みんな仲良く助け合って生きよう
3.若い時に勉強しょう
4.どんな目立たない仕事でも仕事は仕事
5.遺書なんか書かせない。書かないで済む社会を目指そう。
です。
あと何回、桜🌸の花見できるかなぁ

カールⅢ世