劇場公開日 2022年3月4日

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「冷静に死と向き合った10年間。」余命10年 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0冷静に死と向き合った10年間。

2022年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

茉莉(まつり)がボソッとつぶやく。
「どっちが不幸なんだか?」
それは自分より家族の方が辛いんじゃないのか・・・
との思いやり。

この映画は難病もののジャンルに入る映画だが、
主人公は冷静にして知的。
「こんな夜更けにバナナかよ」などとは対極にある映画です。
(けれど、バナナ・・・の主人公の、本音全開で生きる鹿野さんの方が、
(私には共感できるし、映画としてドラマティックだ)
多分、監督(藤木道人)や脚本(岡田惠和、渡邊真子)の美意識や嗜好が
洗練の度合いが色濃いのだと思います。

それにしても藤井道人監督。
遂にメジャー大作ですか?
一年間の準備と撮影期間と潤沢な製作費をかけられて、
多くの観客動員をして大ヒットを記録して、
多くの人の共感と涙を誘ったそうです。
素直におめでとうございます。

でもしかし《私は泣けませんでした》
エピソードがどれもこれも平凡です。
多分、私個人が映画に求めている要素が欠けているから。
思いっきりドラマティックで、想像を超えた意外性とかを
映画に求めている。
等身大の映画、とかはあんまり。
苦手ですね。
「いま、会いにゆきます」ならすごく泣けた。

この「余命10年」は、
多くの知性が知恵を寄せ合って、観客を「涙と感動」へ誘おう・・
と、意図して作られています。
美しく演技力の優れた出演者。
美しい映像。
RADWINPSの情感に訴える楽曲。
感動要素満載なのですが、観客の2割は私のような部外者。

現実世界では、もっともっと不幸な死が溢れている。
虐待に遭い食事も与えられず痛ぶられて死んだ子。
小児がんで学校にも行けず、ただただ苦痛だけの短い生涯。
癌で幼い子供を残して亡くなる若い母親。

余命10年。
長いんだか?短いんだか?
そう言い放つ茉莉の冷静な視点は、良かったと思います。

琥珀糖
マサシさんのコメント
2024年4月3日

誰でも生きているのは余命だと気付くきっかけになりました。この映画は。

マサシ