劇場公開日 2022年3月4日

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「原作者の心の叫びが伝わってくる」余命10年 bionさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0原作者の心の叫びが伝わってくる

2022年3月6日
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鑑賞方法:映画館

 冒頭のシーンからしてもうやばい。茉莉が同じ難病を患っている女性の死に接したことによって、自分の残酷な未来が現実のものとして見えてしまったからだ。早くも目から涙がこぼれる。

 小坂流加さんが茉莉と同じ肺動脈性肺高血圧症という難病と戦いながら作り上げた作品を原作としていて、主人公は小松菜奈。共演者に奈緒、黒木華がいるんだからテンプレ通りに作れば普通に泣ける作品になることは間違いない。そんなレベルではなかった。最後には、原作者の心の叫びが思いっきり伝わってくる内容に仕上がっていて、後半はほとんど泣いていた気がする。

 茉莉と和人が過ごした時間の切り取り方が感情を揺さぶる。桜で始まりサクラで終わる。その間には四季折々を感じるエピソードが挟まり、二人が感じた時の流れをそのまま追体験できる。藤井監督が1年間を通して撮影することにこだわった理由に納得。桜のシーンの映像美は、この作品のハイライト。

 自分が一番号泣したのは、茉莉が母親に心から叫んだシーン。「死にたくない。もっと生きていたい」この言葉は、原作者が叫んでいるように感じた。

bion