「全ての桜は美しい。」余命10年 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
全ての桜は美しい。
素人の特権は、しがらみ無しのぶっちゃけ感想を、好き勝手にほざける事です。と言う事で、無茶苦茶ぶっちゃけますw
まずですよ。藤井道人さんの監督作品がですよ。実は、今一つ好きじゃありません。画力の高さに比して、脚本の現実感の緩さと言うか、煮詰めの甘さと言うか、登場する人々の幼稚さと言うか。いや、全部w
と。オチになる「事実の暴露」の既視感。ありふれ感。時として、そりゃあり得ないにも程があるにゃん!と言う置いてけぼり感。なもんで、シラーってなってしまうんです。でも、評論家は褒めちぎるし、アカデミー賞まで獲っちゃうと言うw
桃井かおりさん&清原伽耶さん共演映画が臨界点。Day&Night、新聞記者、ヤクザと家族の三作は、個人的には「無し」。
兎に角、脚本です。画力の高さはピカイチなだけに、シナリオさえしっかりしてればと。それだけが口惜しく。「監督・脚本=藤井道人」じゃなく、「監督=藤井道人」の作品が見たかった。
と言う事で、これには期待してました。ものすごく。
予告でも見せてくれたシーンの数々の画力はさすがです。文句の付けようの無い美しさです。
居酒屋での同窓会のシーン。カメラは「若者たち」を画面下端に据え、天井を画面上側に映します。レンズの中心が向いているのは「虚」です。
茉莉と和人が意思疎通する辺りから画角が変わって行き、2人の心理の変化を象徴して行きます。こんな心象表現とか大好き。
砂浜を海に向かって歩く4人。ドローンがゆっくりと高度を上げて行きながらも、海の奥行と砂浜までの距離を明確にしていく画面配置。あー、これは「これから迎えて行くであろう時の流れ」の映像表現やなぁ。とか感じさせてくれます。
半裸で鏡に向かう茉莉。その向こうのガラス窓の外には雨垂れ。茉莉の頬に零れ落ちる涙。と言う対比。もうね、拍手して良いですか?拍手したくなりますがな。美しくて哀しいシーンです。
茉莉の車いすが花の中に佇む。夜桜の中で花弁が二人を囃して行きます。和人の横顔が桜を見上げます。はいはい、このテーマ性のある流れだけでもノックアウトでーす。
つながれた二人の手が西日を隠しつつ遠ざかろうとします。「日の終わり」を無くしてしまうかの様に。この時を永遠にと願う茉莉のココロの映像表現でしょうか。素敵過ぎます。
橋をくぐる遊覧船を追い越して、夜空に打ち上げられる花火に向かっていくドローンの映像。花火に、はしゃぐ心情を見事に表現しています。
などなどなど。
その画力・映像表現力の素晴らしさには感嘆するしかありませんでした。
ベタでありふれた短命モノですが、コテコテ演出に走らず、御涙頂戴なセリフも無く、クールな画力で美しさ追求です。藤井道人さんの真骨頂発揮で、ボロボロには泣けなかったけど、個人的には満足でした。
結論。監督=藤井道人で、もう数本撮って欲しいです!
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3/6 追記
endingの解釈ですが、和人の表情に悲壮感は無く、電話(相手はタケル)の声も軽い。花束は「お祝い」の花束にも見えます。
誰かの、何かの、小さなお祝いの場に参加するのか。きっと祝う相手はタケルです。
それとも。
上京組で集まる約束でもしたのか。
突然の風が和人に桜の花びらを吹き付けます。茉莉との、あの晩の様に。
そうだ。きっと。
茉莉が、今、ここにいたならば。
はしゃぐ様に言葉を交わしながら。
この桜の中を歩き
約束した場所に向かっていただろう。
的な感じでしょうか。
藤井道人作品で、このラストがいちばん好き。
心臓悪い人はやけ食いはいかんですよ。大事な酸素がみんな腸にいってしまいます。トイレの嘔吐シーンは冷めました。貧乏性のあたくしとしては、たのみ過ぎにイラッとしました。