「男たちの支配への反旗のうた。」リスペクト 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
男たちの支配への反旗のうた。
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どんな伝記映画もそうだが、ひとりの人間の人生を2時間から3時間に収めることなんて不可能だ。しかしエッセンスを抽出して、その人にとって重要な一面を、ひとつの物語にすことならできる。この映画も、アレサ・フランクリンの波乱万丈な人生を、とりわけ古い家父長制や男尊女卑への反抗と反骨を軸にして脚色している。
最大の見どころは中盤の、マッスル・ショールズの白人ミュージシャンたちとのセッションから曲が生まれていく過程だと思うが、それも音楽を奏でる喜びだけでなく、男たちに突きつけるNO!が形になっていく過程とシンクロする。
しかし一度成功を収めると、一家を支える者として、アレサ自身が家父長制の権力者のようになっていく。この映画の物語ではアレサ自身が道を見失っていると気づいて、奇跡の復活劇へとつながっていくわけだが、映画としては停滞気味になる後半をちゃんと描いていることは、本作にとってとても重要だったのではなかろうか。
あと伝説のシンガーを演じきり、歌いきろうとするジェニファー・ハドソンの気迫と覚悟も素晴らしいです。ブラボー。
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