「優れた題材表現に加えて、それとは真逆の視野の広い監督演出の秀作!」笑いのカイブツ komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
優れた題材表現に加えて、それとは真逆の視野の広い監督演出の秀作!
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
仮に、自身の狂気や怒りが、社会に伝わるために変化し、それが笑いという表現になるのであれば、この映画『笑いのカイブツ』は、主人公・ツチヤタカユキ(岡山天音さん)を通してそのことを見事に描き切っていると思われました。
特に、主人公・ツチヤタカユキを演じた岡山天音さんの演技は特筆すべき表現で、それだけでもこの映画を優れた作品にしていると思われました。
加えて、劇中に時折挟まる主人公・ツチヤタカユキの大喜利のフレーズはどれも優れていると私には感じられ、この映画に説得力を持たせていると思われました。
さらに主人公を取り巻く登場人物の、特にトカゲ・ピン芸人(淡梨さん)とピンク(菅田将暉さん)は、主人公・ツチヤタカユキと真逆の、コミュニケーションに長けたある意味視野の広さある柄の大きな魅力ある人物の描き方で、作品の幅を広げさせていたと思われました。
主人公・ツチヤタカユキと一夜を共にするミカコ(松本穂香さん)の、ツチヤに対して一途でない振る舞いの描き方も、人間に対する理解の深さが素晴らしいと思われました。
(オードリー若林さんがモデルの)魅力ある西寺・ベーコンズ(仲野太賀さん)含めて、(ともすれば一人よがりの)主人公・ツチヤタカユキとは対照的な、周囲の魅力ある視野の広さと深さの描き方は、おそらくこの映画の滝本憲吾監督の視野の広さと人間理解の深さから来ていると思われました。
(実際の原作者のツチヤタカユキさんがオードリーから別れているからこそ、オードリーに協力を求めていないのもこの映画の誠実さが表れていると思われています。)
この、映画の、優れた意味で視野狭窄の主人公と、それとは真逆の周囲の人物含めた幅の広い描かれ方は、対照的であり、だからこそこの映画は実は大人な作品になっていると思われました。
これはおそらく、滝本憲吾監督の優れた演出力が要因だと勝手に感じられました。
個人的には視野狭窄の題材的にはそこまで好みでは実はないのでこの点数ですが、それを差し引いても主人公の魅力含めて優れた作品で間違いないと思われています。
おそらく個人的には、2024年の邦画の10本の内の1本に入るのではないかと、2024年初っ端の映画ですが今から思われています。
滝本憲吾監督には別の題材でも今後の作品を期待しています。