ファイター、北からの挑戦者のレビュー・感想・評価
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主演女優の眼力に凄み漂う
主演のイム・ソンミにはとてつもない眼力がある。何もセリフを発さずともその眼で何かをじっと見つめる表情だけで、テコでも動かないほどの頑なな意思や感情が伝わってくる。その激しくも「静」なる存在が、やがてボクシングという極限の「動」へと導かれていくわけだから、この著しい状況変化によって彼女の魂と肉体が大きく孵化していくのは当然の流れと言えよう。フラッシュバックを用いない構成ゆえ、彼女の過去に関しては想像に身を任せるしか術がない。過去を省みることも、未来を盛大に夢見ることもせず、今はただ全てをこの「現在」の一点に集約させ突き進んでいく語り口が魅せる。と同時に、本作は母子の物語でもある。こういった作品では親子二代の反復とずれが交互に押し寄せるのが常だが、だとすればストイックな日々の中で花開くラブストーリーによって主人公の表情がぎこちなくほどけていく過程は、母がかつて辿った道でもあったのかもしれない。
脱北した若い女性がボクシングに出会う。それは厳しい新生活での鬱憤の...
脱北した若い女性がボクシングに出会う。それは厳しい新生活での鬱憤の捌け口であり、父を呼び寄せるために必要な大金を稼ぐ手段であり、生き別れた母やパートナーと自分を結ぶ場でもある。
観賞前は北朝鮮出身者のサクセスストーリーかと思っていたが、経済的苦境や偏見、脱北後の家族の離散などの苦悩を含め、韓国社会で脱北者として生きることの断片を描くのが主眼と受け取った。全体に静かな雰囲気で、台詞がないがディスコミニュケーションでもない「間」の多さが印象的だった。
あれはどうなったのよ!?
女子ボクシングを扱ってはいるが、スポーツ映画ではないということはオープニングを観てわかった。脱北者の過酷な現実を描いているし、ジナと母親の確執と再生の物語でもある。女子ボクシングだってそれなりに練習や試合のシーンがある。でも、1番伝わってきたのは、ジナの鬱屈した気持ちや、爆発しそうなやるせなさだった。軍隊でやったことがあるからなんて理由は二の次。彼女は闘わざるを得ない強い思いがあったってこと。
だから最初から最後まで、ジナがもがいて戦って負けそうになって、でも立ち上がる姿を見せつけようとしていたんだ。たしかにその姿はなかなか感動的だった。
でも、傑作だとも言い難い。好みの問題もある。ジナ役の女優がかわいいわけでもキレイなわけでもないからって理由もある。でも1番の理由は観終わっても解決していない問題があるからだろう。お父さんはどうなったの!?あーー、モヤモヤする!
ボクシングをする話
北朝鮮からやって来た主人公が、色々とひどい目に遭うんだけど、ボクシングやって最後は良い状況になる話なの。ありがちな話を丁寧に描いた感じだったな。
主人公役のイム・ソンミがすごいなあと思って。全編通じてムスっとした顔して可愛くは見えないの。
でも遊園地にいったときは笑って「かわいい!」と思うのね。この表情の変化をやれるのがすごい。
心情を汲むような映画
主人公の女性は20代後半の設定かな。思春期のような反発心と大人としての耐える振る舞い。派手さもなく、表情も終始固く厳しいが、汲み取れる心情に心掴まれる。
北の人は皆特殊部隊のセリフがウケた。
あと、遊園地のシーンの仄かに溢れる年頃の女性らしい表情も良かった。
ラストもジーンと心温まる。
ボクシングと人生は、似ている。
脱北者のボクシングのサクセスストーリではない。
それを望むなら観ないほうがいいかも。
北から来たジナは、食べるために、仕事が必要だ。
夜の仕事はしたくない。ボクシングジムの掃除の仕事で
その才能を見出される。目的は、やはりお金だ。
その事情は、話が進むにつれてわかる。最初はなかなかわかりにくい。やはり、女性を食い物にしたい不動産屋もいたりしたり、韓国女性の横柄な態度にも辟易する。
人生とボクシングには、共通点は多いと僕は思う。
リングに上がれば、頼りになるのは、自分だけだ。
世の中もみな透明のパンチを繰り出してくる。
だから、彼女の闘いは続く。ラストは、海岸のシーンに光を感じたのは、甘い?
【"私の名前はリ・ジナ。韓国人達は私を脱北者と呼ぶ。私の闘いはまだ終わらない・・。"一人の女性が同民族の"異国"で、ボクシングに希望を見出して行く作品。】
- リ・ジナ(イム・ソンミ)は、冒頭一人で海を見詰めている。深い哀しみを湛えた表情で。
そして、この作品からは3万人を超えると言われる、脱北者が抱える、”絶望と希望”が仄かに見えてくる。-
◆感想
・全編、抑制したトーンで物語は描かれる。
- この風合いがリ・ジナの哀しみを表現している。-
・愚かしき、脱北支援センターの職員の行為。食堂の仕事だけでは生活が厳しく、ボクシングジムの清掃作業も始めるリ・ジナ。
- 韓国に置ける脱北者の実情が垣間見える。だが、ボクシングジムのトレーナー、テスと館長はリに、然り気無く優しい。
テスが、言っていたように、彼らもボクシングによって人生の希望を見い出したからであろう。-
・ボクシングジムに通う韓国人女性達のリ・ジナに対する馬鹿にした態度に、毅然としたセリフを吐くシーン。
- リ・ジナの激しい気性とプライドが分かる。そして、スッピンのリ・ジナに対し化粧バッチリの韓国人女性達の姿の対比。-
・幼き、リ・ジナと父を昔、北朝鮮に置いて、一人脱北した母と再会するシーン。憎しみと哀しみが入り交じったリ・ジナの表情。だが、母も同じ想いだった・・。
- 母が語った"大都会に憧れた女の子の話。-
<ラストシーン。
海辺に立つリ・ジナの傍らには、優しきテスが、寄り添っている。彼女の未来には、数々の障壁があるであろう。だが、彼女はもう、一人ではない。今作品は、派手さはないが、ボディーブローのようにジワリと沁みる作品である。>
□今作は、イム・ジナさんの脱北してからの、表情の変化が印象的な作品であったが、資料によるとイムさんは、俳優生活14年目にして、初主演。そして、今作は、釜山国際映画祭でプレミア上映され主演女優賞に輝いたそうである。
頑張る人は、いつか報われるのだなあ・・、と思った作品でもある。
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