「【"私の名前はリ・ジナ。韓国人達は私を脱北者と呼ぶ。私の闘いはまだ終わらない・・。"一人の女性が同民族の"異国"で、ボクシングに希望を見出して行く作品。】」ファイター、北からの挑戦者 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"私の名前はリ・ジナ。韓国人達は私を脱北者と呼ぶ。私の闘いはまだ終わらない・・。"一人の女性が同民族の"異国"で、ボクシングに希望を見出して行く作品。】
- リ・ジナ(イム・ソンミ)は、冒頭一人で海を見詰めている。深い哀しみを湛えた表情で。
そして、この作品からは3万人を超えると言われる、脱北者が抱える、”絶望と希望”が仄かに見えてくる。-
◆感想
・全編、抑制したトーンで物語は描かれる。
- この風合いがリ・ジナの哀しみを表現している。-
・愚かしき、脱北支援センターの職員の行為。食堂の仕事だけでは生活が厳しく、ボクシングジムの清掃作業も始めるリ・ジナ。
- 韓国に置ける脱北者の実情が垣間見える。だが、ボクシングジムのトレーナー、テスと館長はリに、然り気無く優しい。
テスが、言っていたように、彼らもボクシングによって人生の希望を見い出したからであろう。-
・ボクシングジムに通う韓国人女性達のリ・ジナに対する馬鹿にした態度に、毅然としたセリフを吐くシーン。
- リ・ジナの激しい気性とプライドが分かる。そして、スッピンのリ・ジナに対し化粧バッチリの韓国人女性達の姿の対比。-
・幼き、リ・ジナと父を昔、北朝鮮に置いて、一人脱北した母と再会するシーン。憎しみと哀しみが入り交じったリ・ジナの表情。だが、母も同じ想いだった・・。
- 母が語った"大都会に憧れた女の子の話。-
<ラストシーン。
海辺に立つリ・ジナの傍らには、優しきテスが、寄り添っている。彼女の未来には、数々の障壁があるであろう。だが、彼女はもう、一人ではない。今作品は、派手さはないが、ボディーブローのようにジワリと沁みる作品である。>
□今作は、イム・ジナさんの脱北してからの、表情の変化が印象的な作品であったが、資料によるとイムさんは、俳優生活14年目にして、初主演。そして、今作は、釜山国際映画祭でプレミア上映され主演女優賞に輝いたそうである。
頑張る人は、いつか報われるのだなあ・・、と思った作品でもある。