翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて : インタビュー
「翔んで埼玉」続編 GACKT&杏、「突っ込みどころ満載」の笑いが世界を救うと力説!
2019年に公開され、興収37.6億円というスマッシュヒットを記録した「翔んで埼玉」の続編となる映画「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」(11月23日公開)。
“琵琶湖”というタイトルの通り関西を巻き込んで、主人公たちが地域格差や通行手形制度撤廃のために奮闘する姿が描かれる。
本作で、埼玉解放戦線のリーダーを務めた・麻実麗役のGACKTと、滋賀解放戦線のリーダー・桔梗魁を演じた杏が、第1弾よりもさらにぶっ飛んだ内容になりつつも、熱いメッセージ性が込められた作品の“強さ”を語り合った。(取材・文:磯部正和)
■第2弾は「やらなくてもいいじゃないですか?」(GACKT)
――ファンから待望論が出ていた第2弾でしたが、GACKTさんはオファーを受けたときどんなお気持ちだったのですか?プレッシャーみたいなものは?
GACKT:映画の続編というのは評価が厳しくなる傾向があることや、1作目がヒットしたのは運が良かったからと考えると、最初に浮かんだのは「やらなくてもいいんじゃないですか?」ということ。正直に話をしました。でもやることになってからは、プレッシャーというよりは、体調を崩していたので、声が出るかなとか、そういう部分の心配はありました。
――杏さんは本作からの参加となりましたが、どんな思いを持ってクランクインしたのですか?
杏:武内英樹監督とは以前ドラマ(月9「デート~恋とはどんなものかしら~」)でご一緒したことがあり、またいつか作品を共にできたらなと思っていたので、このとんでもない世界観に呼んでいただけてすごく嬉しかったです。ただ、私は滋賀県出身ではないし、元々原作にもいないキャラクターだったので、滋賀および関西の方が受け入れてくださるのかはいまでも不安です。緊張しています。
――今作は関西の府県のヒエラルキーがテーマになっていますが、こうした格差みたいなものはご存じでしたか?
GACKT:どちらかというと関西の方が強いというイメージがありました。以前は京都の人は誇りが高いとか、県外の人たちが仕事をしづらい雰囲気みたいなものもあったと思います。ただここ30年ぐらいで、京都はもちろん大阪を含めて大きく変わった気がします。以前ほど、その県だからという意識はなくなっているんじゃないですか。大阪の街なんて本当に商魂が強いというか、中国人が多くなってくると、店先で中国語を話す大阪人もたくさん見かけますしね。
杏:大阪や京都というのは、なんとなく“県民性”みたいなものが強い印象はあったのですが、失礼ながらその周辺までは考えが及ばないというか。セリフにも“滋賀作”とか“ゲジゲジ”って出てきますが、正直初めて聞いた言葉で、セリフ一つ一つ検索して調べていました。
――杏さんは滋賀弁にもチャレンジしていますが、いかがでしたか?
杏:音としては抑揚があるというよりは、語尾だけ1音落ちるみたいな印象がありました。関西の方は関西弁というか言葉のイントネーションにシビアな印象があるので、結構気をつけて演じていた気がします。
■現場でどんどんキャラクターが膨らむ武内組
――GACKTさんは劇中、たこ焼きを食べると大阪人になってしまうシーンがありました。かなり衝撃的なビジュアルでしたが。
GACKT:あのシーンは愛さん(大阪府知事・嘉祥寺晃役の片岡愛之助)との芝居でしたが、武内監督を含めて、お互いに「もっと過激にやりましょう」とか「絵にメリハリがつくように」なんて話をしながらやっていました。セリフや台本は頭に入れていきますが、現場で生まれるものを大切にする監督なので、その場で突発的に起きることが多いですね。ただ難しいのは「笑わせにいこう」とか「ウケを狙おう」とすると絶対ダメで。武内監督も1作目から「演技はシリアスに、真面目に」と口を酸っぱく言っていました。ボクらはあくまで真剣にやる。舵を切っていくのは監督なんです。
杏:本当に指揮者みたいな感じですよね。やりすぎると「ちょっと抑えてみて」とか的確に指示をしてくださるんです。
GACKT:やっぱり感情が入るとセリフに間が乗るじゃないですか。そうするとちょっとテンポ感が悪くなってしまうんですよ。そういうときはちゃんと監督から「もっとテンポ良く」と演出が入ります。
■世の中でぶつかっていることって、実はくだらないことが多い
――次から次へとインパクトあるシーンが出てきますが、社会的なテーマも内在されていますよね。
GACKT:この映画って別にディスることが目的で作っているわけじゃないんですよ。それぞれの郷土愛が深いから故に起きていること。郷土愛ってすべてを好きになることではなくて、好きなところも嫌いなところも含めて全部を理解して認めることなんだと思うんです。それを本当にバカバカしく表現する。くだらないと笑ってもらえることが何よりも嬉しい。世の中でぶつかっていることって、実はくだらないことが多いんですよ。最近はそれに目くじらを立てて問題を大きくしてしまう。本当はみんなが「くだらねーな」って笑えば済む話もたくさんある。今だからこそ、こういう映画が必要なんですよ。
杏:私も映画を観たあとたくさん調べ物をしたのですが、相手を知るってとても重要なんですよね。知っているからこそ、愛すべき存在になって、笑い合えることも多い。そんなことを教えてくれる、とても大きな作品だと思います。
――くだらなくもあり、深い作品でもある本作ですが、大きな見どころとして華やかさがあります。特にGACKTさんと杏さんの劇中のツーショットは圧倒的でしたが、ご共演してみていかがでしたか?
GACKT:お会いする前のイメージだと、とてもサバサバしている方と思っていたのですが、実際演技をしていないときの杏ちゃんの立ち振る舞いなどを見ていると、すごく女性的な方だなと。だからこそ、男役や慣れない滋賀弁をしゃべるのは大変だっただろうなと感じながら芝居をしていました。
杏:GACKTさんは圧倒的な美というイメージだったのですが、現場でもその通りのビジュアルが輝いていました。特に第1作目を客として観ていたので、麻実麗として現場に立たれている姿を見て「あー麗さんだ」ってすごく嬉しかったです。
■おまけ:印象に残っているシーンを語る…本編鑑賞後に読んでください
――パロディも含めて、今回も非常に攻めた内容になってしますが、作品をご覧になって印象に残っているシーンはありますか?
GACKT:もう突っ込みどころ満載ですよ。大阪から◯◯◯◯(編集部注:ネタバレのため伏せ字)が○○○○されるシーンなんか、宇宙に飛び出していくじゃないですか。全然作品に宇宙なんて関係ないのに、どうなってんだ!って感じで突っ込んでいました。
杏:よく○○も許可出しましたよね。「本当に大丈夫なの?」というシーンのオンパレードで……。「あれ平気なの?」って勝手に心配していました(笑)。あとは、武蔵野線の歴史を調べたのですが、気になることだらけでした。エンドロールも釘づけになって観ました。「えっ、こんな人も出ていたんだ」という人もたくさんいたような。
GACKT:そんなシーンのなかで、(二階堂)ふみちゃんが大阪に毒されていく演技はすごかったですよ。大丈夫かなって(笑)。あとからふみちゃんに聞いたのですが、あの大阪人のイメージは横山やすしさんだったって。それを聞いて「あーなるほど」って思いました。ボクの大阪のイメージは竹内力さんだったんですよ。
杏:あのシーンはすごかったですね(笑)。
GACKT:各々が大阪人を演じているのですが、「誰をイメージしてやっているんだろう」という感じで見ていました。
――撮影での印象に残るエピソードはありましたか?
杏:現場でツボだったのが、琵琶湖畔で作戦会議をしているシーン。風がかなり強くて、顔中が砂だらけになっちゃうんですよ。あれで麗と桔梗の髪形をキープするのがめちゃくちゃ大変でした。しかも、そこに駆け込んでくるのが(近江晴樹役の)くっきー!さんで。「おーい」って走ってきて地図を広げるのですが、その勢いに思わず皆吹き出してしまったり。
「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」は、11月23日から公開。
<GACKT>
ヘアメイク:タナベ コウタ
スタイリスト:Rockey