「母へのわだかまりを解消する内容」スープとイデオロギー kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
母へのわだかまりを解消する内容
韓国映画では当たり前のように登場する食事シーン。大人が子どもに「ご飯食べたか?」「たくさん食べな」と聞く姿も韓国映画でよく見る姿だ。在日朝鮮人のヤン・ヨンヒ監督の家庭の食事シーンも同じような印象を持つものだった。父と母と娘の会話に垣間見える父親の愛情と、朝鮮総連の活動家として働いてきたこだわり、そして夫婦の絆。あの家族を象徴するシーンだった。
3人の息子が北朝鮮に渡っていながら、出身は韓国の済州島という監督の母の生き様が語られるドキュメンタリー。現在の視点からするとなぜ北朝鮮の欺瞞を見抜けなかったのか?という気持ちになる。でも、当時の韓国政府は完全な軍事独裁。韓国政府憎し!から北朝鮮を支持する人も多かったということか。
監督の母が体験した済州島の4.3事件のことを深堀りしていく内容だが、その歴史的事実を明らかにすることが目的ではない。いや、もちろん4.3事件の事実はとても重いし、考えるべきことも多い。でも、あくまでこの映画は3人の息子を北朝鮮に送った母を、ヤン・ヨンヒ監督が認め許し受け入れる映画だった。
自分の母もアルツハイマー型認知症を患い亡くなっているってこともあって、色々と気持ちを揺さぶられてしまう内容だった。母の過去を表現するアニメ映像は好きではないが、それを問題にしてこの映画の評価を落とすのは本筋ではない。
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