劇場公開日 2022年1月14日

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「娘を持つ父親なら胸がざわざわする」スティルウォーター Yukさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5娘を持つ父親なら胸がざわざわする

2022年6月11日
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予告編は、フランスでの犯人探しサスペンスのようだったが(マット・デイモンのそんな映画も観てみたいが)、本編はだいぶ違う。

マット・デイモンが演じるのは、石油採掘に従事したあと失業し、ドナルド・トランプには投票せず、妻とは死別し、自分は父親失格だと思い、エリートやアメリカンドリームとは無縁の生活を送っている疲れ果てた中年である。ジェイソン・ボーンとは全然違う。

さらに娘は留学先のフランスで、殺人罪で5年前から服役しているという、観ているこちらが息苦しくなるような出口のない苦境にある。

刑務所で交わされる父と娘の複雑な交錯と、フランスで頼ることになる母子との交流と感情の機微。この背景の空気感を描いた脚本と演出の仕込みは素晴らしい。

最後は何ともやるせない展開が待っている。娘を持つ父親であれば胸がざわざわするような映画になるはず。

Yuk