「アメリカ肉体労働者階級の父親が娘の救出に挑む!!」スティルウォーター バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ肉体労働者階級の父親が娘の救出に挑む!!
アメリカの田舎、オクラホマ州スティルウォーターに住む、日中は肉体労働で汗をんがし、夜は家やバーで酒を飲みながらスポーツ観戦をするような典型的な労働階級の父親ビルが、単身で言葉の通じないフランスに無実で投獄されている娘を助けるために向かうところから物語は展開される。
娘のアリソンとは関係が決して良いものとはいえないが、母親はすでに亡くなっている。祖母も高齢ということもあり、頼れる人物が他にいないことから、ビルが行くことになったという状況である。
アリソンから手渡された手紙を弁護士に渡すが、返事は絶望的。しかし、アリソンに正直に言えないビルは上手くいった嘘をついて、独自で解決法を探っていくのだが、労働者階級で学のないビルにとって、言葉も通じない異国の地で、さらに法律も関わることもあり、協力者も現れるが、釈放にはほど遠い。
希望がないという事実を知り、アリソンは激怒し、絶望する。
不器用ながら、がんばっている父親に対して酷いようにも感じられるし、ビルの心境も考えると複雑でもあるが、この2人の関係は母の死によって大きくこじれた状態が続いているのだ。
信頼関係が欠如している父と娘の距離感をどう詰めていくのかも、今作の見所のひとつといえるだろう。
また舞台となるマルセイユは、『海辺の家族たち』でも描かれていたように、観光地として知られる一方で、移民や貧困層の多い場所でもあり、かなり治安が悪く危険も伴う。
たまたま出会った英語がわかる役者のヴァルジニーのサポートもあり、事件に関わりがありそうな人物を特定していく過程で、ビルはヴァルジニーと、その娘のマヤの間で奇妙ではあるものの「疑似家族」のような関係性が構築されていく。
そのことによって、アリソンのために捜索を続けるたい思いとは別にヴァルジニーたちの危険に繋がる可能性や、ビル自身もその疑似家族の中にある安心感を壊したくないと考えるようになっていくことで、自分の娘と新たにできた家族を天秤にかけなくてはならなくなってしまうのだ。
アリソンは投獄されて数年が経ち、模範囚でいれば、あと数年で出られるかもしれない。無難にそれを待ち擬似家族との生活をおくることが正しいことなのか、危険を冒して、擬似家族を崩壊に導くとしてもアリソンのために行動することが唯一の父親としては正しいことなのか……。
そしてビルの決断は正しかったのか、それとも間違いだったのか、娘を助けるためなら許されるのか。大切な人の人生を左右する決断を前にした時の人間として、親としてのモラルが試される作品といえるだろう!!