最後の決闘裁判のレビュー・感想・評価
全214件中、161~180件目を表示
巨匠リドリースコットの、圧倒的な映画づくり力が光る
誰かがこんなことを言っていた。文豪、三島由紀夫はなにも書いていないと。「白波の立つ海がみえた。沖合いの空には雲が白く輝いていた。」どこにでもある、なんでもないことを、語彙と考察、そして筆力でもって圧倒的なイメージに仕立て上げてて読み物にしてしまうのだと。
この映画もそれに近い。
ただの痴話げんかである。特筆すべきことのない出来事を、巨匠リドリースコットが、圧倒的な映画づくり力でもって、観客を埋没せしめる世界観をつくりだしてみせてくれるのである。
その意味で、本作品のみるべきところは、ストーリーは二の次にして、まずは「映画のもつ魅力」ではないかと思う。中世の質感。空気感。なにもかも粗削りで骨太のそれらを、細緻に仕組んで世界をつくる。本物以上に本物的だと言わせしめるレベルで。映画づくりの原点で頂点を極めんとするかのように。
俳優、筋書き、それらも大事だが、構成要素を掛け算で膨らませて映画の質をあげさせる力、それこそ監督の映画づくり力だ。で、リドリースコット、さすがの一言。ただの痴話げんかだからこそ、かえってわかりやすい。
ひとつ、羅生門的な展開は、あまり感心しなかった。場面の解釈に三者三様のずれがあってこその羅生門だと思うのに、肝心のずれがない。嘘のありかも明瞭。羅生門というよりはTENETテネットのマルチ視点にヒントを得たストーリーテリング、ぐらいの形容なら納得。
それとマッドデイモン。個人的に好きな役者なので、彼がパーフェクトに見える。あと味はジャン・ド・カルージュの正々堂々とした魂、それのみ強く印象に残った。直情的との解説が目立つが、そうだろうか。悔いのない正しい挙動をさっと取れるのは、徹底的に理知的でなければなせない技だと思う。だから私的にはジャン・ド・カルージュはありえないキャラである。だからヒーローに映る。
リドリースコットからは、グラディエーターのラッセル・クロウ、この最後の決闘裁判のマット・デイモン、そしてウォルフガング・ペーターゼン監督のトロイのブラッドピット。三人のヒーローが私の中にいる。
ほんとにあった松本清張
監督リドリー・スコット、脚本にマット・デイモン、ベン・アフレックとくればこれは映画ファンなら、なにを置いても観に行かねばならない。
全三幕構成だが、2幕目の途中でこれ松本清張じゃんって気づいてしまった。
金、女、権力と欲しいものを手に入れてるにも関わらず、友人の妻にちょっかいをかけて転落していく、ついついやってしまうんだよね、清張は。
虚を追い求めて破滅する男たちと、常に実を取り賢く生きる女たち。「最後の決闘裁判」とロマン溢れるタイトルだが、女性からしてみれば、最初も最後もなくただ迷惑なだけである。
親の七光りのバカ息子マット・デイモンと底辺から這い上がった野心むき出しのアダム・ドライバー、二人の間で傷ついていく女性と三幕目にしてやっと本作のテーマが立ち上がるわけだが、まあ、長いかな。ここは本作の残念なところだが、松本清張と言うワードを頭に浮かべて観ると、これが不思議と面白い。
良いところは、監督のリドリー・スコットがデビュー作で「デュエリスト」、「グラディエーター」でアカデミー賞を取るなど、コスチューム物は得意で、冒頭からワンカット、ワンカット、キメにキメまくっていて、流石リドリー・スコットと言いたくなる。美術、撮影が素晴らしい。
製作者のインタビューを読むと黒澤明の「羅生門」が引きあいに出されているが、成る程三幕構成で同じシーンでもセリフや描写が異なり、真実は藪の中といったところだが、1つ確かな事は、14世紀のフランスに松本清張は存在していたという1点のみである。
義務と名誉と愛情と欲望
1836年フランスはノルマンディーで実際に行われたとされる、妻を陵辱された旦那と、彼の旧友による決闘裁判の話。
決闘裁判の触りから始まるのはまだ良いけれど、三章に別けて違う人の視点やシーンで進行していき、進んで戻っての繰り返しだわかっていることをもう一度補完して説明したり、まるまる同じ件だったり、中には本当はこうだった的な流れもあって、ドラマとしてはとても面白いけどちょっとくどい。
ただでさえ尺が長いのに。
ただ、伯爵のクソっぷりとか、ジャックとジャンの関係性とそれの変化がとても良かったし、決闘裁判の様子も見応えがあったし、それをみている国王や観衆の変化とかも面白かった。
フランス史なんて全然わからないので、序盤の西暦を示し領地争いの様をみせられる展開は、少し不安になったけれどそこは重要じゃなくて良かったw
流石の出来栄え!巨匠と名優たちの競演
巨匠となったリドリー・スコットの最新作は
映像も撮影も素晴らしく
壮大なスケールで
名優たちの競演を見事に撮り切った
些細な描写にも気にかけた作りとなっていて
その細かい所を見る演出した手腕は
本当に満足感が高かった
古代や中世の作品となると
史実がしっかりしている
英国(イングランド)が大半だが
フランスの中世代の作品はなかなか見れない
ただフランスであっても
言語が英語だったため
かなり違和感があるが
これは致し方ないこと
その分、現代の状況を鑑みた
黒人、アジア人を無理に入れ込まなかったことは
作品全体のクオリティを高めたと言える
私のお気に入りのシーンは
いつも笑顔の振る舞う国王
下の者に対し、慈悲に満ちた笑みではなく
常に人を見下した
馬鹿にしたような笑み
この辺りの描写も流石と膝を叩く作品
とても印象的でした
ʅ(◞‿◟)ʃオチがない
名匠、健在
封建主義=男尊女卑どころか「女性は男性の所有物」とされていた時代に、己の尊厳のため真実を訴えるヒロインの姿が、本作の一番の見どころだったと思います。
3章に分けて、同じ出来事を主要な3人それぞれの視点で描いているので、事象がわかりやすかったです。
出てくるキャラが、現代の倫理観から見るとヒロイン以外はどいつもこいつもひどい。
ヒロインのマルグリット(ジョディ・カマー)にしか感情移入できない。
カルージュ(マット・デイモン)とル・グリ(アダム・ドライバー)のどっちにも共感できない。
それに輪をかけて、アランソン伯ピエール2世(ベン・アフレック)と、カルージュの母親もひどい。
そんな感情誘導を受けた後での、堂々ラストの決闘へ。
『グラディエーター』さながらの緊迫のシーンの連続。
燃えましわ。
「マルグリットのためにカルージュに勝ってほしい、この決闘が終わった後はカルージュなんてどうなってもいいから」と応援するような没入感を得ました。
名匠リドリー・スコット、健在!
FOX映画の悪癖
徐々に徐々に高まってMAXで終わるような
【「史上初の女性の訴え」】
レイプを取り上げたら、中世ヨーロッパも現代の日本もさほど変わらないなと思ったりする。
これは、最後の決闘ということになっているが、実は、「史上初の女性の訴え」でもある。
14世紀はヨーロッパにペストが蔓延し、人口の3分の一から3分のニが命を落としたと言われており、多くの農奴の死で労働力不足が顕在化し、穀物の収量が極端に落ちたことが記録されている。
また、100年戦争は14世紀の終盤がやっと折り返し地点で、ペストと戦争で多くのヨーロッパの国が疲弊する一方、イタリアではルネサンスが始まろうとしていた。今僕たちが考えているより当時のヨーロッパの国境は曖昧で、争いにより更に不安定化していて、権威を求めた国がローマ・カトリック教皇との結びつきを一層求めるようになっていく。
こうしたなか、女性の人権など認められる状況にはなく、それは現代になるまで大きな変化はなかった。アメリカでさえ、女性解放運動は、1960年代の話だ。
戦いにはめっぽう強いが愚鈍な夫ジャン。妻マルグリットの持参金が頼りだったりする。
魅力的で読み書きもでき、実務も優れて、男の能力や見識を見抜いてしまうマルグリット。いくつかの会話で明らかなように、女性には必要ないとされていた教養を身につけていたことが判る。
策略家で実務に優れるが、狡猾で自制が効かない色好みのライバル・ジャック。
同じく色好みで自制が効かず、良いところなどない無能な領主ピエール。
これだけで何かが起こりそうな予感だが、中世ヨーロッパでは前述の通り、女性の権利など認められてはおらず、法や権威の後ろ盾もなかった。
ただ、僕たちの国の伊藤詩織さんのケースのほか、女性がレイプ被害を訴えようとするムーブメントの#MeTooでも、子供に性的虐待をした事件でも、明確な抵抗意思を示したのかが争点になって、うやむやになってしまうことが多いことを考えると、現代もマルグリットの時代もじつは大差ないなと思ったりする。
途方に暮れそうになると思うが、女性も、右寄りのパターナリズムの連中からフェミと誹謗されようと、差別を許さない男性も、声を上げ続けなくてはならないのだ。
マルグリットのように一時的で終わるのではなく、継続して声を上げ続けなくてはならないのだ。
真実は人の数だけある
様々な対立
ジョディ・カマーが美しい
1386年のフランスで、騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ル・グリに強姦されたと訴えるが、ル・グリは無実を主張した。結論は、カルージュとル・グリによる死を懸けた「決闘裁判」に委ねられることになった。勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者は罪人として死罪になり、カルージュが負ければ、妻のマルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けることになるというルール。さてどうなる、という話。
実話に基づく作品なので、結論は出ているが、カルージュの見方、ル・グリの見方、マルグリットからの見方とそれぞれの思いがわかり、入り込めて素晴らしかった。
ピエール伯が1番の悪者かな。
騎士の話なので、槍を使った戦いシーンが多いし、人数も多くて迫力有った。
なんといってもマルグリット役のジョディ・カマーが可愛くて美しかった。
中世史が好きな人は見るべし
ヨーロッパ中世史が好きなので、あの時代の雰囲気、服装、髪型、甲冑、町並みなどが見られて大満足。シャルル六世のおかしな精神性やジャンが文盲らしい事も描かれていた。
中世の女性は気の毒だ。持参金が多くあったとしても、本人の気持ちなど全くと言っていいほど尊重されず 人権もなく子孫繁栄の為のモノ扱い。そんな時代の女性が、公の場で凌辱されたと申し出たのだから、大スキャンダルだし、マルグリットは気丈過ぎる。
この映画は、その事に焦点を当て、三者三様の真実のあり方、つまり自分の都合の良い解釈現象を三度描き出す手法をとっている。
それは、その人の虚栄心だったり、名誉だったり、復讐だったりする。その結果としての馬上槍試合のシーンがメインで、それが素晴らしい。まさにリドリー・スコット監督❗️ ほぼほぼそれに尽きる。槍を持っての一騎討ち、ものすごい迫力で いったいどうなることやらとハラハラした。「決闘の結果は神の審判」「レイプによっては子どもは出来ない」など、今の時代からすると [何言ってんだか😫]と呆れてしまうが、14世紀に居なくて良かったと思う他ない。
マット・ディモンは、闘いに明け暮れ、女性は自分の所有物とした粗野な人物を好演、ジョディ・カマーは、従順でありながらもしっかりとした意志を持つ女性を好演していた。
余談ながら、後のアンリ二世って、あんなような馬上槍試合して 余興なのに、槍が目に刺さったんだと思ってしまった。
勘違い自惚れ野郎アダム・ドライバーがもはやかわいい。
中世フランスを舞台に夫の旧友にレイプされた妻に代わり夫が決闘裁判に挑む話。事件があってから裁判までをじっくり描くのでは無く、事件前から事件後にかけての出来事を夫ジャン、レイプをした夫の旧友ル・グリ、妻マルグリットそれぞれの視点で、3章で描く構成。
なので、同じ場面がそれぞれの視点で出てきて、その都度演出がちょっと変わるのが面白い。まず、全員の章で出てくるル・グリとマルグリットが初めて会い、ジャンとル・グリが一見和解するかのようなシーン。
ジャンの視点では、完全に自分のプライドのことしか頭に無いので妻を道具のようにル・グリとキスをさせ、それが妻の視点では戸惑って動揺している顔がずっと映されている。その一方でル・グリの視点では、マルグリットがキスした後にちょっとル・グリの方をチラッと見るのがわざとらしく映ってる。
さらに、レイプのシーン(これを2回見せるリドリーはハードだ)では、ル・グリの視点ではあんまり抵抗してないように見えるけど、マルグリットの視点ではめっちゃ助けを呼んでるし泣いてる。さらにドアの音がより大きくなっててル・グリの威圧感が強調されてたり。
『羅生門』のような真実はどれか分からないと言っている方多いけど、ル・グリはそもそも女性に対して自分はイケメンなんだから相手も喜んでいると思い込んでいる節があるので、あれは完全に同意のない行為。女性達と戯れている所で同じような構図のベットシーンがあるんだけど、あれだって女性の方は喜んでたかは微妙だねえ。え?って顔してたし。
極めつけは、ジャンの視点では出てこなかったレイプされた妻へのジャンの対応がもう最悪なんだけど、ここが男性が女性のことを無意識に抑圧していることの象徴的なシーンで良かった。ジャンの視点では、ジャンが重要だと思っていることしか出てこないということは、あの対応はそこまで重要じゃない(それを含め妻とのやり取りはほぼ出てこない)と思ってるからだと思うんだよね。
まぁなんか2人のアホな男の話を見せられた後に、マルグリットの視点になるので「いやっ、ですよね?そうですよね?」っていうシーンの連続で楽しかった(笑)それに2人のアホな男、現代の男性もだいたいこのどっちかのタイプの方多いですよ?(笑)
さらに女性の受難あるあるも詰め込まれていて素晴らしい。私的に1番印象に残ったのは、「美男」と言ってたからレイプではなく望んだと裁判で問われていたシーン。「美女」だからヤリたいのはそっちの話でこっちと一緒にすなだった。ここら辺男性中心社会が女性にとって如何に不利かってのも読み取れるし良かった。
ここまで女性映画っぽく書いたけど、最後の決闘シーンはめっちゃ手に汗握って見応えあるし、ジャンの話は出世競走に負けた悲しき男の話でもあるし、男性同士の友情が世情に揉まれて歪んでいく話でもあり、2/3は男の話だから見てください(笑)
何がいいたかったのか
さすがリドリースコット。飽きちゃう様な内容を最後まで見てしまう所がすごい。もしかすると、主役の3人の演技力が凄かったのかも!
ジャン目線はまあ、その時代ならそうなるよなあという感じで、実直だけど女性に対しては旧態然とした振る舞いの男。ジャックは悪いやつじゃ無さそうだけど、確かに喰えない感じで、マルグリッドの事になると理性が働かなくなるのか。マルグリッドにとってはレイプの偽証に利があるのか?
ラストはこれでジャンが負けたら哀れな愚直な男って感じでそれはないだろ!?って見ていたが、どうも史実では映画では描かれていない話があるようで、確かにその方が辻褄は合うと思った。
リドリーは今作で何を言いたかったのか?MeToo?ジャンの母の言葉は昔の女性の心の叫びとして印象深かった。
ラストの決闘後のマルグリッドの表情と、ジャンがいなくなってからの表情が忘れられない。
西洋ではアダム ドライバーはハンサムなのか?が最大の謎。
全214件中、161~180件目を表示