「むか〜し昔のお話ではありません」最後の決闘裁判 Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
むか〜し昔のお話ではありません
【決闘】
名誉の獲得・回復・紛争の解決恨みを晴らすなどの目的で
当事者双方が同意してあらかじめ了解し合った
ルールに基づいて行う闘争のことをいう
日本でも古くは武士で後に任侠による「果たし合い」
は行われていたが明治期に法律で明確に禁止され
数年前に高校生同士がSNSで申し合わせ殴り合いを
しようとした際「決闘罪」が適用され
話題になったことがある
14世紀のヨーロッパで実在した
「決闘裁判」のエピソードをリドリー・スコット
監督がメガホンを取り映画化した今作
感想としては
フェミニズムを押し出したかのような
テーマでありながら男性優位の時代背景を
つぶさに再現する事で当時の価値観を描写
しつつ今の社会の認識では改善したのか?
と気付かされる造りはこれこそメッセージ性を
もつものだと感心しました
14世紀のフランスはパリ
シャルル6世の元で決闘に臨むジャンとルグリ
そしてマルグリットの姿から始まり
ジャン・ルグリ・マルグリットの視点で
順番に同じエピソードを辿っていきます
いわゆる「羅生門方式」
ジャンは地方の領主の息子で
ルグリは農家の出ながら
二人は戦場では互いに助け合う戦友で
ピエール伯に仕える従騎士(見習い騎士)
ところがピエール伯は明らかに
ルグリを優遇し戦い以外知らない
ジャンを嫌っていました
ジャンは脳筋の戦士で戦いは強いが
読み書きも怪しいほどの極端男
占領先の領地でかつての裏切り者の
土地で出会った娘マルグリットに
一目ぼれして婚姻し
嫁入りに用意された土地も
得ようとしますがそこが既に
ルグリの所有権になっている事を
知り徐々にルグリへの疑念が
生まれていきます
ある日ピエールはルグリを自らの
酒池肉林に誘い自らの領地の財政難を
打ち明けるとルグリは税の取り立てを
約束し牧師を目指しただけあって
学があるルグリは財政の立て直しを
実現してしまいます
ピエールはより気に入ってなんと
ジャンの父が亡くなった後の領主の
座をルグリに任命してしまいます
ジャンはもちろん激怒しますが
家来の運営や嫁に説得され田舎に
越します
そして数年後
ジャンはルグリととりあえず和解し
マルグリットをルグリに紹介します
するとジャンはピエール伯から海を越え
スコットランドへ遠征を支持されます
正直死んでもいいと思われている命令
ですがかわりに騎士の称号を得られる
とあり名誉の為に参加します
どうにか生き残りわが城に戻ると
マルグリットから留守の間にルグリに
暴行されたと告白を受けます
ここから章はルグリ視点に切り替わり
ジャンと和解した際に
読んでいる本の事などで会話を
交わしたにマルグリットに夢中になり
留守に押しかけて暴行
ジャンに言えば怒り出すことや
黙っているように言うなど好き放題
やった場面が出てきます
このシーンは後のマルグリット視点
でも再現されますがドアの閉め方や
マルグリットの逃げ方などが微妙に
異なりルグリからはマルグリットが
誘ったかのように見える対比的な描写で
それぞれの主観を表現していました
ただマルグリットの章では
チャプター表示のマルグリットの「真実」
の部分だけ残りあたかもマルグリットの
最後の章が事実であるかのように
描写されます
その章では
結局ジャンはマルグリットを愛していた
というより跡継ぎを産んでほしいとか
家の事ばかり考えている存在で
それでいて運営の能力も正直乏しい夫
である事実や
子供が出来ない事を悩むシーン
ルグリに襲われたことを告白したら
ジャンが激怒してきた事などが
わかり勇気を出して告白した事で
名誉を第一にするジャンは
決闘裁判をシャルル王へ申し入れる
決断をします
ルグリはピエールにもみ消してもらおう
としましたが王に直接話が行ってしまい
王の前での証言では
やってないで押し通すしかなくなります
この王シャルル6世も作中の描写で
見てわかるとおりの暗君(狂気王の名があった)
決闘裁判はあっさり承認されます
証言に臨むマルグリットのお腹は
事件から丁度6か月でふくらんでおり
マルグリットはジャンの母から息子を危険に
晒したことや女友達からはあなたも
ルグリを誘ったのだろうなど言われたい放題
そんな事は黙っているのが当たり前といった
風潮を押し付けてきます
ここに関しては14世紀の男尊女卑社会!
と言ってしまうにはそんなに21世紀の社会で
無くなった事とは思えない部分があると思います
権力者が女性に手を出してなんて事件
しょっちゅうあるわけで
でついに決闘
ジャンが負ければマルグリットも火あぶり
という真実の告白の代償としてもあまりに理不尽な
取り決めながら死闘の末ジャンは勝利
マグルリットは「真実」を勝ち取るのです
ジャンも「戦いしかできない夫」ですが
その唯一出来ることで結果的に妻を守った
事になります
負けて死んだルグリは死体を引きずられ
大衆の前で逆さ吊り
遠慮なしに描写されます
で結局マルグリットのお腹の子は
どちらのという明確な描写はありませんでしたが
ラストのマルグリットの子は金髪でしたね
マルグリットは金髪
ジャンも金髪
ルグリは黒髪でした
ポリコレやフェミニズムといった描写が
映画にも影響してくるようになりましたが
映画内の世界観やテーマに内包して
しっかりひとつの作品として見せるところは
さすがのリドリー・スコットと思いました
ちょっと長いですがおすすめです