「高校生の自分が救われた気がする」ディア・エヴァン・ハンセン あめふりさんの映画レビュー(感想・評価)
高校生の自分が救われた気がする
ストーリーの賛否はよく分かります。
嘘をつくという最低なことをして称賛を得る。そんな話に共感できないと。
でもそこじゃなくて、大切な本筋は、軽度の障害を持った人、グレーゾーンで苦しんでいる人達への救いの物語だと思います。
●エヴァンがなぜ嘘をついたのか
その場の空気を読むことが何より重要な学生生活においてそれが出来ないエヴァンは浮きまくっています。それが社会不安性に繋がっているのではないか。
空気を読まないと、社会や学校というコミュニティでは相手にされず、自分を見てもらえないこと=生きていないような気持ちになります。
はじめて相手にして貰えた人、目の前の人にまた失望されたくない。そんな気持ちで必死に嘘をついてしまったのではないかな、と思います。
●人からは普通に見えても本当は違う
発達だと分かりやすい人もいれば(多動症など)、普通に見せることができる人もいるのがグレーゾーン。でもその為には、健常者の何倍も努力が必要です。
だから偉いとか凄いとか嘘ついてもいい、とは全く思いませんが、見えないところで苦しんでるだね、頑張ってるだね、というのを途中の盛り上がりのところで言われた気がしました。
学生生活も社会生活も、一瞬の空気の読み合いで人間関係が変わってしまう。そのことが恐ろしくて仕方がない。無視され相手にされず、非難されたり貶されたり。そんな風な自分が、自分自身が、一番嫌いだった。死にたいくらいに。そんな自分が受け入れられたら。普通の自分のように扱ってもらえたら。
すがりたくなる気持ちはすごくよくわかる。
やってはいけないことをしたことも、自分自身が本当に一番良くわかってる。エヴァン自身が一番。だから決着を着けた。
でもエヴァンは受け入れられたという、他人と関われたという大切な経験を得た。とても大切な経験を。それを手に入れるのはどんなに大変だっただろう。自分自身で手に入れた経験を、自ら他人と関わることができる。コナーを通してじゃなく、エヴァンとして。