「現代的な恐れと恐怖」ディア・エヴァン・ハンセン N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
現代的な恐れと恐怖
最初の緊急事態宣言中、主演のベン・プラットらのUPした
「You will be found]をユーチューブで聞き、いったいどんなミュージカルなんだろうと
ニューヨークなどに行けるはずもなく悔しく思っていたところでの
映画化、そしてロードショーだった。
作中に登場する孤独や、人と人のつながりがとても「現代的」だと感じた。
本音を吐けない心の孤独に、語っては居場所を失うのではという恐怖。
そのフチで主人公のとった行為は許されるはずもなく、
しかしながらもたらされる充足感と周囲の喜ぶ顔は背徳と抱き合わせで、
ああ、ヤバすぎるんだけどもう引き返せない。
始終、付きまとう居心地の悪さが、
せずにおれない渇望度合いが強烈だった。
(もう依存である)
だがこうしたごまかしは大なり小なり誰もが一度は味わったことが、
もしくは継続中ではないのかと思えてならない。
そして迎えるクライマックス。
破綻するほかないと思っていたが、
回収されてゆく物語は、しょっぱいけれど不思議なほど安堵に満ちていた。
果てに主人公に残ったものを思えば、甘さ控えめのリアル志向だ。
まさに今を鋭く切ったブロードウェーミュージカルの実力、と観る。
し、今、見るからこそ響く物語でもあると感じる。
「You will be found」が一番好きな曲だろうと思っていたが、
主人公の母親が歌う「So big So mall」が一番良かったな。
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