劇場公開日 2021年10月23日

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「"映画"で近似された体験型アート」Shari filmetraさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0"映画"で近似された体験型アート

2021年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「赤いやつ」は屠殺場で流れた血の塊であり人々が生きるのに利用するべく発火させられた炎であり、東京から持ち込まれた災厄の象徴でもある。その象徴と人々の直接の関わりは始め、妄想癖が発露した結果であるかのように、少女の一夜の夢かのように、明確なフィクションに見えるように、巧妙に遠ざけられ畏れられる何かかと思わされるが、一転、「相撲」という力を受け止め合う関係性の中では、突然生々しい実体を持って描かれることになる。

登場する現地の人たちの言葉は、それぞれのやり方で実体のない実感と、実感のない実体の双方を抱えて、その狭間で押し合いへし合いしながら生きている命の声であり、その言葉を背景にすれば、次第に「赤いやつ」がそれらのつなぎ目として、質量をもたされていくのが分かる。しかし、そいつはもとより非平衡状態でしか知覚されないのだから、必然的にこの映画にはあの子供たちの相撲のシーンが必要になったのだ。力を受け止め合い、押し合いへし合いする中でしか存在しないもので我々はみんな繋がっているということを大声で叫ぶ、そのために必要な「声のあげかた」を、子供たちから教わるために。

filmetra