劇場公開日 2021年10月22日

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「アスペルガーという個性が、温暖化に苦戦する世界の“ジャンヌ・ダルク”を生んだ」グレタ ひとりぼっちの挑戦 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アスペルガーという個性が、温暖化に苦戦する世界の“ジャンヌ・ダルク”を生んだ

2021年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

スウェーデンで生まれ育ったグレタ・トゥーンベリ、2018年8月当時15歳。気候変動に対する政府の無関心に抗議するため、1人で国会議事堂前に座り込んで学校ストライキを始めた初日から、本作のカメラは彼女の姿を追う。グレタに賛同して座り込む若者たちが増え、SNSで拡散したことで、彼女の影響力は国境を超える広がりを見せる。早急な温暖化対策を訴え毎週金曜日にデモを行う「Fridays For Future」(FFF)など、賛同者は今や世界で700万人に及ぶという。

このドキュメンタリーは、グレタが抱えるアスペルガー症候群についても率直に伝えている。症状の中に、ひとつの物事に執着する、こだわり続けるという特徴があるそうだが、それこそが彼女が気候危機にこだわり続け、若くして気候正義のムーブメントを主導する存在にまでなった要因であったことを本作は教えてくれる。

周知のように、“地球温暖化との戦い”は長らく苦戦が続いているが、グレタは敗色濃厚で意気消沈していた人々や、未来に対して無力だと感じていた若者たちを奮い立たせたという意味で、百年戦争で劣勢だったフランス軍を導き奇跡の逆転をもたらしたジャンヌ・ダルクのような存在になるのかもしれない。ただしグレタは、温暖化を否定する大人たちの多くから反感も買っていて、殺害予告まで届いているという。ジャンヌ・ダルク同様に殉教者となることだけは、あってはならない。

高森 郁哉