「魔法を超える奇跡の力(ギフト)」ミラベルと魔法だらけの家 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
魔法を超える奇跡の力(ギフト)
昨年末に公開されたばかりのディズニー・アニメ最新作を、U-NEXTで発見!
見たかったので、早速見たね。
ディズニー長編アニメ第60作目でもある本作。
先頃発表されたゴールデン・グローブ賞でアニメ映画賞を受賞。現在賞レースでも軒並みノミネートされるなど、善戦。オスカーのアニメ映画賞ノミネートはほぼ確実。
ディズニーにとって、2021年の自信作!
さてさて、その内容とMY感想は…
ディズニーの王道“魔法”と最近のディズニーの系統“多様化”。
舞台は南米コロンビア。
その奥地にある町、“エンカント”。
その町に住むある家族と不思議な家。
魔法の家と、家族全員が魔法の力を持っているのです…。
この家族“マドリガル家”の子供たちは、5歳の誕生日を迎えると家“カシータ”から“魔法の才能(=ギフト)”をプレゼントされる。
一人一人が違う才能。料理で人を癒せたり、天気を操る事が出来たり、聴力が長けたり、変身能力、開花、怪力、動物と会話…。
厳格な祖母を家長とし、個性的でユニークな面子の家族。
そして主人公は、三姉妹の一番下、ミラベル。
冒頭は彼女が歌って踊るミュージカル。
ラテンのノリ弾ける陽気さ、楽しさに引き込まれる。
それもその筈、楽曲を手掛けたのはまたしてもリン=マニュエル・ミランダ。
ノリノリの楽曲、コミカルな楽曲、胸に響く楽曲…いずれも素晴らしい。
さて、そんなミランダの“ギフト”は…?
やっぱり、歌…?
NO!
実は彼女だけ家族の中で、ギフトを与えられなかった。
大抵ディズニー主人公というと“特別”な場合が多いが、逆の発想が面白い。
日本にはアラレちゃんがいるが、ディズニー・ヒロイン初のメガネっ娘なんだとか。
地味で、歴代ディズニー・ヒロインの中でもとりわけカワイイ/美少女でもない。
でも、全部引っ括めてそれが狙いなのだ。
自分だけギフトを貰えなかった事にコンプレックスを抱きつつも、家族の一員として明るく過ごすミラベル。
…が、時々空回り。それもこれもギフトを持たない分、家族の役に立ちたい気持ちから。
だけど、家長の祖母はミラベルの“空回り”に眉を潜める。
家族全員に厳しいおばあちゃんだけど、ミラベルには特に。
ギフトを与えられなかったから、ひょっとしておばあちゃんは私の事を恥に思ってる…?
長姉の婚約。ちなみに、完璧美人の長姉とは折り合いが悪い。
そんな中ミラベルは、カシータに亀裂が入る様を目撃する。
さらに、家族の魔法の力が弱まったり、異変が…。
何かが起きてる…!
家族の中の“事情通”から話を聞く。
不吉な予知能力を持っていたおじの存在…。
家のとある場所へ。魔法の家なので、家族各々ドアを開けると、不思議な世界。
ミラベルが向かったのは、禁じられたおじの部屋。砂だらけの遺跡のような広い空間。
そこであるものを見つける。それに映し出された“ヴィジョン”を見て、驚愕。
今にも崩れそうなカシータと、自分の姿が…。
カシータの亀裂や家族の魔法の力が弱まっている原因って…?
それが元で長姉の婚約をメチャクチャにしてしまう。
祖母からは決定的に大目玉。
やっぱり、祖母は私だけに厳しい…?
カシータの亀裂や家族の魔法の力の弱まった原因は、私…?
疎外感。
私は家族に必要とされていない…?
だからそもそも、カシータは私にギフトを与えなかったの…?
それでも私は家族を愛している。
カシータや家族の危機を救おうとする。
そんな彼女の前に現れたのは…
失踪した筈のおじ。
家族の中でも町の人々の間でも話をする事すらタブーとされている恐ろしい存在…。
と思っていたら、とてもそうには見えない。
失踪したのではなく、誰にも見つかる事なく家の中に隠れ住んでいた。ネズミと一緒に。
そう、少々風変わりな性格のおじさん。
だけどそれは、家族を愛しているから。
家族の前から姿を消したのも、家から離れられないのも。
矛盾しているかもしれないけど、本当は優しいおじさん。
ミラベルとおじさんは似通っている所がある。
家族に対して負い目を感じている。
自分自身が抱えるコンプレックス。
それでも家族を愛している。
おじからの助言を得て、見つけたカシータと家族を危機から救う方法。
ところが…
カシータと家族を危機に晒していたのは意外な人物。
勿論本人は知らずの内に。
本人は家族を守る為に、必要以上に厳しくなり過ぎていたのだ。
言うまでもないだろう。祖母。
一見仲良く幸せそうに見えるマドリガル家だが、実は各々もコンプレックスを抱いていた。
完璧ではなかった家族。カシータの亀裂はその表れか。皮肉なものだ。
ミラベルと祖母は激しく口論。本音をぶつける。
家長体制、束縛、しきたりから脱する。
今を生きる自立した女性像。
二人の衝突が取り返しの付かない事態を招く…。
カシータや家族を危機に晒したのは、やはり私…。自分を責めるミラベル。
そんな彼女に歩む祖母。また孫娘の失態を責めるのかと思いきや、自分を責める。
今、気付いた。こうなってしまったのは私のせい。私が厳しくし過ぎたから。
祖母が語る過去。祖父との出会い、祖父の死、エンカントの始まり、守ると誓った家族、その誓いのカシータ…。
このシーンは本作のハイライト。さすがに目頭熱くなるものがあった。
カラフルで美しい映像。楽曲は先述の通り。
楽しさと感動とメッセージ。
安心して見れるディズニー良作。
…しかし正直、ずば抜けて面白く、期待を上回るってほどではなかった。
話ももう一山もう一展開あるかと思ったら…。ちと可もなく不可もなくだった。
ミラベル一人が何故ギフトを与えられなかったのか、その理由も釈然としない。
しかしそれは、ギフトを持たなくとも自分の大いなる愛で家族を一つにする。
それがカシータには分かっていた。
そう解釈したい。
失ったものは大きい。
でも、改めて分かり得たものも大きい。
失ったのなら、また見つけ出せばいい。
壊れたのなら、また直せばいい。
そうやって出来た奇跡こそ、本当の魔法。
いや、魔法を超える奇跡の力(=ギフト)。
エンカント、カシータ、そしてマドリガル家!
※2024年1月21日、Disney+にて再見。採点と印象、ちょい修正。