「終盤の展開は楽しめるが、推理ドラマと人間ドラマの整合性が悪い」沈黙のパレード tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
終盤の展開は楽しめるが、推理ドラマと人間ドラマの整合性が悪い
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冒頭からの流れとタイトルから、復讐に関わった人たちが黙秘を貫いて「オリエント急行殺人事件」のような展開になるのではないかと予想したが、結果的には、そんな「完全黙秘返し」みたいな話にはならなかった。
終盤、真相が二転三転するストーリーは、それなりに楽しめるものの、特に物理学の知識が謎解きに必要となる訳ではないし、真犯人を巡る仮説の根拠も不明確で、推理ドラマとしては、今一つ説得力が不足しているように思う。何よりも、最初に犯人と思われた人物が、やっぱり真犯人だったというオチには、どこか釈然としないものが残る。
人間ドラマとしては、子供を亡くした親やその親友、恋人を殺された男性、あるいは、妻をかばおうとする夫のそれぞれに「情」を感じることができるものの、最も印象に残ったのは、犯人を有罪にできずに新たな犠牲者を出してしまった刑事の悔恨の情であった。ただし、それは、事件の解決に直結するものではないため、推理ドラマと人間ドラマの整合性の悪さを感じてしまった。
仮に、司法制度の欠陥を糾弾するような内容ならば、もっとすんなりと観られたのだろうが、そもそも、完全黙秘さえすれば罪に問われないという設定そのものに現実味がないため、いずれにしても、違和感は避けられなかったのだろう。
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