「面白かったけど映画の尺では物足りない」沈黙のパレード RustyNailさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かったけど映画の尺では物足りない
原作を読んだ上で本作を鑑賞。なので、原作が映像化されることを楽しみにしつつ、映画オリジナルな部分や相違点にも着目した。原作のボリュームが大きいので映画の尺に収めるにはどこかしらカットしなければならないだろうと予想していたが、案の定、物語を成立させるため全体的に急ぎ足になってた印象。展開が早いから退屈はしなかったが、トリックや真相が伏線もなく次々に明らかになっていくのでミステリーとしてはワクワク感が足りなかった。しかし、映画ガリレオはドラマと違い謎解き以外の物語に見所がある。今作は遺族の無念を晴らせなかった草薙が蓮沼殺害の真相を明らかにするか、遺族たちにとって1番幸せになるストーリーでかたをつけるかで湯川とぶつかり葛藤する場面が1番感動し印象に残った。
残念だったのが以下の2点。
1.高垣智也があっさり沈黙を破ったこと。
原作では心配する母親や職場の人間に迷惑をかけ続けることに耐えられず自白をするのだが、映画では高垣智也という人物が佐織の恋人という設定以外何も描かれていないため、すぐに自白してしまい、ただ口が軽い男として見えてしまった。
2.増村の執念深さが伝わってこないこと。
増村はアリバイがあり殺す動機もないことから容疑者から外されていたが、この男の協力無しでは蓮沼殺害計画が成し得ない重要な人物。そこで本橋優奈ちゃん事件に遡り徐々に増村との接点が明らかになっていくのが原作では1つの醍醐味だったのだが、残念なことに映画ではあっさり優奈ちゃんの母親由美子の兄であることが判明する。増村がどれだけ由美子と優奈ちゃんの幸せを願って生きてきたかという描写が大幅にカットされているから増村の蓮沼に対する恨みや執念深さが伝わってこなかった。ただ最後のゴミ収集のシーンで増村本来の人柄が出ていたのは良かった。
2つとも尺の都合上描かれていないのだろうが、少し物足りなさを感じてしまった。もっと容疑者達が沈黙して警察がアリバイを崩せず謎に満ちた事件というのを演出して欲しかった。でも映画オリジナルの湯川先生と内海の絡みは面白かったし、キャストの演技も申し分なく、パレードも盛大に表現されていたから劇場で観て良かったと思える作品だったことは間違いない。