劇場公開日 2022年2月11日

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「【”我々を差別する日本人も同じ人間だから・・、とオモニは言った。”民族の血と絆、兄妹の絆を考えさせられる。大阪・生野区で生き抜く在日家族の姿を描いた作品。】」北風アウトサイダー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【”我々を差別する日本人も同じ人間だから・・、とオモニは言った。”民族の血と絆、兄妹の絆を考えさせられる。大阪・生野区で生き抜く在日家族の姿を描いた作品。】

2022年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

ー 物語は長兄のヨンギ(崔哲弘:監督・脚本も担当)達、4兄妹を、女手一つで育て上げたオモニの葬儀から始まる。
  だが、その場にはヨンギはいない・・。-

◆感想

 ・大阪・生野区のオモニ食堂が舞台。店には暴力団員、北朝鮮組織に関わる若者がやって来る。誰が敵か味方か分からない混沌とした中、ヨンギ以外のキム兄妹は抱えた借金返済のために明るい表情で働く。
 - 在日朝鮮の方々の幼児からの苛めを含めた苦労が、ショットで挿入される。けれども、彼らはオモニの言葉”我々を差別する日本人も同じ人間だから・・、”と言う言葉に支えられ、必死に生きる。-

 ・行方不明だったヨンギがボロボロの姿でオモニ食堂に久方ぶりに戻って来る。
 - 徐々に明らかになる、ヨンギの哀しき過去。彼の娘、ナミはヨンギの弟チョロの娘として、育てられていた。ナミが朝鮮大学校に行くか、日本の大学に行くか悩むシーンの言葉。
 ”朝鮮大学校を出ていると、就職の時に不利になる・・。けれど・・。”
 在日朝鮮の方々には申し訳ない限りであるが、現代日本の実態であろう。
 民族間の軋轢・・。-

 ・日本人が北朝鮮に拉致された時代。オモニ食堂で働く女性が泣き崩れながら言った言葉は重い。

■脚本について少し気になった箇所
 ・キム兄妹と暴力団の関係性や、北朝鮮思想に実は染まっていた青年の立ち位置。
 ・ヨンギがガンホの結婚式の際にトイレで射殺される流れは、良く分からなかった・・。
 (ガンホの身代わり?それとも民主的思想を持つヨンギに対する北朝鮮思想に侵された人々の蛮行なのかな・・。)

<北朝鮮という国が発している思想の恐ろしさは名状しがたいが、それと在日朝鮮人の方々を一緒にして観てしまう我々日本人の一部の人々。
 在日朝鮮人の方々が立ちはだかる民族の壁を乗り越えようともがく姿は、日本という島国に安住している我々に対し、”その姿勢で良いのか・・”と、言う問いかけであると思った作品。>

■全く知らなかったのだが、上映終了後、崔哲弘監督、新宮里奈さん(髪の色が違っていたので、最初分からず)、玉木惣一郎さんの舞台挨拶があった。
 コロナ禍の状況下での映画製作の大変さ、新宮さんは劇中の意匠(冒頭の、お葬式。ラストに近いガンホの結婚式。)まで担当されたそうである。
 そして舞台挨拶を聞くたびに思うのだが、映画監督の方は頭が切れ、ユニークさも併せ持つ方が多い。俳優さんも胆が据わっている。
 現在、地方のミニシアターを順番に回っているそうである。
 コロナ禍に負けずに頑張って頂きたい。

 と思えば、一方では愚かしき行為を繰り返して来た監督、俳優達。

 だが、崔哲弘監督の力強い言葉を聞いて、”邦画は大丈夫だろう”と勝手に思いながら、映画館を後にした。

<2022年4月17日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU