「バスターのむき出しの野心に共感できるかどうかで評価が分かれる一作。」SING シング ネクストステージ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
バスターのむき出しの野心に共感できるかどうかで評価が分かれる一作。
前作『シング』(2016)で見事に劇場を復活させたバスターが、サブタイトルのとおりプロデューサーとして次のステップを狙っていく、という作品です。前作のメンバーはほぼそのままに、自己紹介もなくいきなり物語が展開するので、本作は明らかに前作の鑑賞を前提とした作りになっています。前作ファンであればすぐに作品世界に没入できるので嬉しいところですが、初見の観客にはちょっと設定やキャラクターの関係が分かりにくい部分があるかも知れません。ここは原題通り、『シング2』の方が続編感が強く打ち出せて良かったのでは…。もちろん、それぞれのキャラクターの特徴を引き出す演出はふんだんに盛り込んであるので、関係性についての戸惑いは比較的短時間で軽減されると思います。
むしろ物語が進むにつれ、バスターの言動が自らの野心を実現するために仲間を踏み台にしているようにしか見えなくなってきて、そちらの戸惑いの方が大きくなってきます。「このままバスターを応援していていいのか?」という。
もちろん一つひとつの挿話はキャラクターが成長したり、過去のしがらみを乗り越えていく手段として機能しているため、そこには共感や達成感を感じるんですが、そもそも問題の発生源が…、と思うと少しわだかまりを感じてしまいます。
とはいえ前作に引き続き音楽と映像の同調は非常に高度で、前回よりもさらに高度に発達した映像技術を目の前で実感することができます。
B'zの稲葉さんは通常の場面での演技は少し緊張しているのかな、とも感じましたが(声優初挑戦とのこと)、いざ歌詞が口から流れ出すと一気に場面をさらっていきました。彼の演じるロック歌手、クレイの存在感は、本作の仕上がりを左右しかねないほど重要な位置づけでしたが、その役割は十二分に達成していたと思います。
前作のマイクがどうなったのか、全く説明がなかった点も、もやもやポイントが増したところ…。