流浪の月のレビュー・感想・評価
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リアルな痛みを感じる
2020年の本屋大賞を受賞しベストセラーとなった凪良ゆうさんの原作を李相日監督が映画化した作品。原作は図書館で単行本を借りて読んだが、映画公開前に発売された文庫本も購入した。こちらは後日ゆっくりと読もうと思う。
内容については今更触れる必要もないが、あの原作の濃密な空気感を映画は実にうまく再現している。撮影監督ホン・ギョンピョ氏の面目躍如といったところか。
主演は広瀬すずさんと松坂桃李さん。2人とも好きだしうまいが、特に松坂さんは大幅に体重を落として臨んだ役作りの結果が出ている。
微に入り細を穿ち映像化した名作
作品の内容は皆さんレビューしてると思うので別視点で語ります。
とにかく映像表現が素晴らしい。最初の木漏れ日だけで、日本の公園をここまで幻想的に表現するのかと心を掴まれました。
劇中の随所で日差しの柔らかさや仄暗いカフェの安心感、人物から見てそこだけ明るい場所の異質さなど、光が効果的に使われています。もちろん光の差さない暗さも……。
マンションのベランダから街並みを見渡す場面でも、どんな魔法を使ったのか説得力のある解放感が伝わってきました。
今作のタイトルにある月の使い方もバッチリ。
150分という長さと娯楽性は低く万人向けではないので4.5にしましたけど、個人的には文句無しの満点です。
あと、劇中にちょこっと出てくるアニメがパプリカで、故今敏監督へのリスペクトを感じ取りました。10歳の子が観るアニメじゃないよ笑。
こういう細やかな主張、好きです。
横浜流星の最高の演技
引き算の映画
作品としては「問題作」としての立ち位置なのかな。 でも本人たちのみ...
世間から後ろ指差される関係であっても、、
キャストが良すぎてものすごく期待して観に行った。
さすがに期待値が高いのか座席もかなり埋まってるなと感じた、やっぱり松坂桃李×広瀬すずはみんな見たいよね、流石の集客力。
世間から見れば元犯罪者とその被害者の関係、でもお互いが抱えるものを一番理解し合っている2人。暗くてずっしり重たい感じが常にあったけど、映画内世界に深く沈み込む感じで集中して見れて2時間半あっという間だった。(でもやっぱりちょっと長かったのかトイレ退出がちらほら)
最後まで2人が救われる展開があるわけではない、暗い作品観てたはずなのに鑑賞後感が悪くない不思議な映画だった。
2人が支え合ってこれから生きていくのを応援したいと強く思った。
もちろん俳優さんの演技はさすがとしか言いようがなかった。
全体的に暗いシーンの中で、白鳥玉季ちゃんが出てくる回想シーンにはすごくほっこりした。
謎
原作を読んだ時から、さらさが両親をなくした時から世話になっているおじさん夫婦の家に帰りたくない理由、従兄弟から毎夜性被害を受けていることを警察で何故言わなかったのか、本当に謎だった。
それが嫌だから、雨が降り出しても公園にいたのだということ、そこで声をかけてくれた大学生の文の家について行き、いつでも家に帰っていいと言われていたのに、自分の意思でい続けたこと。
最後に引き裂かれた時、誘拐犯として捕らえられた文を助けられるのは自分の証言だけなのに、従兄弟に性被害にあっていることを言えなかったのは何故なんだろう?
自分を一時的にでも助けてくれた文を、助けたいと思わなかったのか?
それ以上に、言わなければおじさん夫婦の家に戻ることになり、従兄弟からの性被害がまた始まるとは考えなかったのか?
その辺、原作でも描かれていなかったから気になっていたのだけれど、映画でもやはり描かれていなかった。その後従兄弟の性被害に遭わずに成長したか否かも謎のままだ。
そして再会後、さらに週刊誌の二次被害にあっても、依然としてそのことは伏せ続けている。苦悩はしているけど、文をいつまでもロリコン誘拐犯にしたままだ。
「警察で失敗した。どうしても従兄弟にされてたこと言えなくて」「言えなくて当たり前だよ」
これだけのやり取りで納得できるわけがない。言えなかった理由、今も言えない理由が欲しかった。
原作では文の世界に性欲は存在しないと読みとったので、二人の関係は幼いさらさとの時点から人間愛のようなもので結ばれていると思っていたが、映画ではたんなる肉体的な問題に処理されてしまったようで、そこも非常に残念だった。
役者はそれぞれ熱演していて素晴らしかった。
アンティーク屋の親父の件は他の皆さん同様気になった。ほぼ不在で開けっぱなしにしてて品物を盗まれないのかとか。w
2時間30分の間、映画の中に引き込まれた
ロリコン
悲劇的なファンタジー
罪なのか、愛なのか
原作は未読。
李相日監督って、「悪人」にしても「怒り」にしても犯罪を犯した人間との愛を描くのがうまい。犯罪を犯しても人としてそこまで憎むべき存在なのかってことを問いかけてくる感じ。本作もそんな映画だった。
誘拐事件のなった15年前と現在をうまく場面展開しながら物語が進む。事件当時、誘拐の犯人と被害者、そんな関係性に違和感を覚えるほど、2人の間に流れる雰囲気は穏やかで温かいものだった。
徐々に明らかになる更紗と文が抱える闇。男として色んな感情を揺さぶられ、かき回された。性の問題と人との関わりについて、こんなにえぐってきて、でも優しく目の前に提示されるなんて。なんて物語だ。
そして、狡猾な暴力はいい人の仮面を被ってくる。横浜流星の演技を見てそんなことを思った。こんな役もいいな。もちろん広瀬すずと松坂桃李もよかった。でも、物語的に文の役はあんなにイケメンでいいのだろうか。勝手な願望だが、岡山天音や矢本悠馬あたりが演じたものを観てみたい気がする。
ひたすら二人の幸せを願って鑑賞しました。
ーーねえ文、わたしってどんな子だった?
原作にも登場するこの台詞を、僕は非常に重要な台詞だと思っている。それは、自分を押し殺し、自分自身さえも偽り続けてきた更紗の悲痛な叫びである。彼女はもう、文に尋ねなければあの頃の自分を思い出すことが出来ない。
そして、文と過ごしたあの頃が更紗にとって重要なのは、更紗にとって最も重要な「両親と過ごした幸せな日々」を模倣したものだからである。夕食にアイスを食べ、朝食にケチャップをぶちまけ、日曜日には昼間から床の上に寝そべってビデオを観ながらデッカいピザを食べる一見野放図な行為は、単なる彼女のワガママでは無い。文はその生活を全肯定してくれた。
原作との比較はあまり意味のない行為ではあるのだが、両親と暮らした幸せな時代をバッサリカットしたのは何故だろう。お父さんは病気であっけなく死に、お母さんは男を作って出ていったと言う説明だけでは、まるでネグレクトされた子供だ。幸せな子供時代を想像する事は難しい。叔母の子(いとこ)による性的虐待からのエスケープを強調したかったのだろうか。文との生活は彼女が人生で初めて得た唯一の安息地に見えてしまう。
また、母については男と逃げたことだけ語られるのに、父がバカラのワイングラスでウィスキーを美味しそうに飲んでたエピソードを残したのは中途半端である。
李相日監督は意図的に幸せな描写を取り除いて撮影しているように見える。それは、再び二人で行動を共にする事になったエンディングも例外ではなく、明るい未来を予見させる要素はほとんど無い。陰鬱な気持ちで映画館を出た。暗ければ良いってもんじゃないと思うのだが。
追記
原作によるとcalicoを邦訳すると更紗とのこと。お互いずっと求めあってたんですね。二人には幸せに暮らして欲しいです。
人と寄添い合える事の幸せが素敵だなと思いました。
様々な技術力
他の方も書かれている様、警察絡みは考証不足に思えるし、他にもマイナス要素は色々あるのだが、トータルでは長さが心地よい、見ごたえのある作品と感じられた。それはやはりスジの展開・役者・撮影・編集などの技術の結集によるところと思う。
原作未読のため次々展開するスジに心地よく裏切られた。何よりラストに救われた。
子役白鳥玉季は初見で正に広瀬すずに成長しそうな顔立ちでかつ演技も上手で感心した。大人たちも皆期待にそぐわぬ力演。中でも広瀬すずには顔についた血を拭わないまま街を歩くとか相合い傘の後をつけるとか横浜流星を怒鳴りつけるなど無理スジなシーンも見られたが、スーッとおとなの役にはまってきた感。あと内田也哉子は驚きのキャスティングだった。
そして月や鳥などの様々なイメージカットや画面の隅にピント送りで重要な要素をチラ見せさせたりする美しい撮影。パラサイトの撮影チームとのこと、確かな腕を見せていただきました。
製作で最初に出た名前はUSENの宇野さん、これからもどんどん面白い邦画に投資して行ってください。
個人的マイナス点は、原作通りだとは思うが、大本の原因が病気というのは好きではなかった。二人の関係性を描くのにその理由は必要なかったのでは?と思いました。(不幸が原因で不幸になるネタが個人的に嫌いでして。)
本当に無理…
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