劇場公開日 2021年11月12日

「物語そのものというよりも、画調を許容できるかどうかで評価が分かれそうな一作」攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5物語そのものというよりも、画調を許容できるかどうかで評価が分かれそうな一作

2023年11月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これまで数多くの映像作品が登場し、後発の作品に多大な影響を与え続けている、士郎正宗原作の『攻殻機動隊』シリーズですが、3DCGアニメ版は本作が初とのこと。2020年にNetflixが配信したシリーズを、2021年に藤井道人監督が劇場公開用に再編集した上で色調なども調整を施した作品が本作です。今回の公開は2023年11月に公開予定の続編に先行した、リバイバル上映という位置付けです。次回作公開前に予習が必要な観客のために公開してくれるという、先般公開の『SSSS.GRIDMAN』と同様の配慮。

冒頭から観客はいきなり難解な用語と設定が飛び交う世界に放り込まれる訳ですが(「持続可能戦争」って何?と思っても、もちろん断片的な説明どまり)、何が何やらな序盤を通過すると、「ポスト・ヒューマン」との戦いという構図が見えてきて、物語を追いやすくなります。そしていくつかの要素が錯綜して、一体どうなるの!?となったところで、「続く」…、と、次回作に向けてなかなか気分を盛り上げてくれます。

全ての設定、背景状況、独特の用語を理解しようとするのは、特に初見では無謀という他なく、まずは「攻殻機動隊」の雰囲気に馴染むことに集中するのが良いかも。再編集版とはいえ、登場人物、特に草薙素子ら元公安9課のメンバーは、それぞれの人物像が浮かび上がるように丁寧に描き分けてあるので、人物描写に着目するのも良いかも。特にトグサ(山寺宏一)…。

物語を追う上で気になったのが3DCGの画質で、3年前の映像とは言ってもちょっと時代がかっているかも…、と感じるものでした。むしろあえてこの画調を採用しているのかな、と思っていたら、時折目を見張るような先進的な映像も含まれていて、ちょっとどう捉えたらいいんだろうと思うこともしばしば。かなり無理なたとえで表現するなら、『トイ・ストーリー2』を観ていたら、部分的に『トイ・ストーリー4』の映像が混じっていた、という印象です。「この作品はこういった表現なのだ」と得心できるかどうかで、作品の受容度が相当変わりそう!

yui