ミュータント:マックスのレビュー・感想・評価
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嘘松スプラッシュ!
高校を中退したハムスターはお金を稼ぐため日々バズるネタを求め街を徘徊していた。ある日クロミウムなる異次元の街でスーパーヒーローだったと自称するマックス・フィストなる人物と出会い、大ヒットを確信する。
一方姉のインディゴは亡き父の願いもあって、弟のハムスターを大学に(裏口)入学させるため闇社会に身を投じお金を稼ごうとしていた。しかしとある事件で目の前の大金に目がくらみ持ち逃げ、組織から命を狙われることになってしまう。事態を把握したハムスターとマックス・フィストは反撃に打って出る。
SNSで拡散されるマックス・フィストなるヒーロー像と現実における酒浸りのホームレス。超人パワーで無双する殺さずのヒーローの戦いとヤクでぶっ飛び銃乱射。
マックスの実体験と実像の間にある距離感は、独り歩きするネット記事も相まって狭まるどころか広がるばかりで、終始解釈の余地を残している。
マックス・フィストに始まる物語でありながら彼の正義を余所に、ヒット記事を生むに当たっては評判の良し悪しなどどうでもよく数(閲覧数)こそが正義であり、ネット民にしてみれば真実か否かは別段重要ではなく人気や流行への迎合こそが正義である。
情報の大元であるマックス然り、人は皆見たいモノを見、魅せられたいモノに魅入られ、信じたいモノを信じる。真実を都合よく捻じ曲げ切り取り創造する様をまた垣間見る。
正義の在り方は異なれど、マックスの自称実体験、それを聴きハムスターが綴る世界(ネット記事)、読者が求めるコンテンツの3者はというと、理想なりニーズなりでマッチングしており同列(いや並列か?)に並べられもするわけだ。
詰まるところ、クロミウムなる“ここ”にはない異次元の街とは、ネットにおいて年中無休で勃発している嘘松本当松論争に見える、自分が描くそうあってほしい理想故に浸りたい、また自分という現実世界から隔絶しているが故に否定したい世界の象徴と言えるのではなかろうか・・・?
マックス・フィストとは、よく言えばバズり悪く言えば炎上した人間の姿であり、束の間の栄光を謳歌し非難の的になってしまった者。
そんな一過性の流行を我々はどの様に消費してきたのか、その先には一体何が残ったのか。顛末を見届け真実を見極めた者はどれだけいるだろうか・・・
すぐ隣の人間にとっての常識がまたすぐ隣の誰かにとっては即座に嘘松になる世界。現実世界に希望の光をもたらしうる優しい嘘をボロクソに糾弾する一方で、現実逃避したいがために辛い真実を覆い隠そうとする混沌とした世界において描かれる、絶対の正義などないヒーロー物語にいったいどんな意味を見出せるだろうか。
「スーパーマン」...「ハンコック」(2008)...「マイティ・ソー」(2011)...「キル/オフ」(2016)...「バットマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生」(2016)...「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」(2016)...「二ノ国」(2019)...
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