劇場公開日 2022年2月11日

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「早めに忘れたい」嘘喰い AZさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0早めに忘れたい

2022年3月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

メニューにある本格インドカレーを注文したら薄味のビーフシチューが出てきたような作品。
具材にインド産の野菜を使っているとはいえ、これで本格インドカレーを名乗るのは無理がないか。見知らぬ生魚もぶっ刺さっているし。そういう映画だった。
嘘喰いが見たい人、気になっている人には勧められない。映画見てる時間があったら原作読んだ方がマシだったと思った。

実写化に原作の再現などあまり期待できるものではないが、「よくこの内容でこのタイトルを堂々と名乗れるな」と思うくらいがっかりした。
映画という短い尺に纏めようとするために生じるカットについては仕方ないと思える部分もあるが、それにしてはあまりにも余分が多く、目玉となっているババ抜きも勝負を取り巻くテーマが原作と異なっているため、嘘喰いを撮ろうと思って作られた作品ではないのだと感じられる。
キャスト目当て、イケメン目当てならまだ見られる映画になっているのかもしれない。ただ嘘喰いではないというか、これを原作と同じタイトルで呼ぶことに抵抗感がある。

全体的に俳優同士の謎のイチャイチャシーンがやたら目に付く。そのキャラを形作る原作のシーンをカットして差し込まれるファンサービスらしきものが寒々しい。
キャラクターではなくその俳優達を撮りたいだけのように見えて何度も醒めてしまった。

ストーリーもとんとん拍子で話が進んでいくが、テンポが良いというよりどことなく薄味で、原作を読んでいるときのハラハラ感は無い。
尺が足りないためにギャンブルシーンも色々カット・改変されており、それによって設定の破綻が生じている部分も残念である。
登場人物の知性も原作から大分落ちている。全体的にポンコツ感すら漂う。

原作に存在しない、あっても無くてもどうでもいいようなシーンを入れる前に必要なシーンはもっとあっただろう。
ハーモニカを吹くとかいう原作に無い謎のアレンジを阻止してくれた主演は偉いが、それでも映画には原作に無い謎のアレンジがあまりに多すぎるため「これはOKしたのか…」と逆に混乱した。
でも原作に無いラブシーンを演じるか原作に無いハーモニカを吹くかだと脅されたのであれば、泣く泣く前者を取る気持ちも分からなくもない。前者も嫌だが。
いかに原作がどのシーンも捨てられない、余計な要素を継ぎ足すことで破綻するような、過不足無く緻密に練られた作品であることを再確認するという意味では良い映画であったかもしれない。

監督や脚本が悪いというより、そもそも圧倒的に尺が足りない、このキャストを出さなければならない、恋愛要素を捻じ込まなければいけないというノルマを無理矢理達成しようとした結果でもあると思うので、次回作にも特に期待出来ない。
次回作にエアポーカー編を望む声もあったらしいが、この映画の出来栄えでは絶対にやらないでほしいとすら思う。というかエアポーカー編をやるために必要なピースが何一つ無いのだから不可能だろう。

原作再現なんて高望みはしないから映画として面白くあってほしい、それで原作の宣伝になれば万々歳だと思っていたが、宣伝どころか「これが嘘喰いだと認識されたくない」と思うことになろうとは。
映画を見たときの苦痛の記憶がキャストの方々の顔と結びつくという弊害を未だ引きずっており、流石に申し訳ないため早々にこの映画の存在を忘れられるよう努力するつもりである。

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AZ