劇場公開日 2021年8月13日

「最強の老人に最強の敵が現れたら、という続編としては正統的な展開の一作。」ドント・ブリーズ2 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0最強の老人に最強の敵が現れたら、という続編としては正統的な展開の一作。

2021年9月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

序盤からのたたみかける展開に身を委ねる楽しさを味わえる一作です。ただし残酷描写はかなりのもの(R15+指定)なので、前作を最後まで観ることができなかった人は、今作もかなりの覚悟が必要でしょう(『孤狼の血 LEVEL2』でも出てきた、「アレ」をするとは…。サム・ライミもプロデューサーでは満足できなかったのか…)。

前作で極悪非道な殺人マシーンぶりを発揮して、戦闘能力のかけらもない青年達を血祭りに上げた老人(スティーブン・ラング)が今回戦うのは、正体不明の殺人プロ集団。前作で超絶的な能力を見せつけたので、今作の敵はそれに合わせてアップグレードするという、続編としては正統的な作りと言えます。

さらに敵の手強さに加えて、老人には8年間経過した心身の衰えが見られ、その危うさがさらに物語の緊張感を高めています。だが戦闘能力は未だ健在。「座頭市のようだ」と評された戦い方は、水面の波紋の利用など、むしろさらに洗練されています。ていうか、ロド・サゲヤス監督、ほんとに『座頭市』観てるんじゃないの?という既視感。

序盤早々にいきなり小さな少女と老人の仲睦まじい生活が描かれるので、前作を観た人ほど意表を突かれるだろうし、前の展開を知っていると「まさか…」という思いも頭をよぎるものの、空白の8年間に一体何があったのか、序盤の時点ではほとんど手掛かりがありません。その後もジェットコースターのような展開が続き、終盤まで説明的な場面はほぼ皆無です。しかし脚本がかなりしっかりしているのか、物語の勢いを落とすことなく真相を徐々に明らかにしていく語り口はみごとです。

明らかになった過去、そして結末に至る展開をどう捉えるかについては見解が分かれそうですが、前作からの流れと、意表を突いた本作の設定を踏まえると、決して悪くはないと感じました。

彩度を落としたざらついた映像は、老人と少女の世間と隔絶した生活状況を視覚的に強調していて、とても印象的でした。これはいわゆる「ブリーチバイパス(銀残し)」という技法なのかな、とも思いましたが、鑑賞中は判断付きませんでした。

yui