「Choral A」異動辞令は音楽隊! ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Choral A
会社の先輩から聞いた感じ、どうもあんまりみたいだったので期待はそこまでせずに鑑賞。
結構面白かったです。ちょくちょく引っかかる場面はありましたが、一人の男の成長譚としての面白が2時間の尺に詰めこまれていました。
良かった点
・演奏シーンの爽快さ
刑事課から左遷された主人公・成瀬をはじめ、多くのものが兼務もしくはそこに異動となる音楽隊、全体的に空気は重く、演奏自体も最初はたいした事ないのですが、全員がふとしたきっかけで少しずつ演奏に取り組みだし、成瀬が大きく心変わりしたのもあり、チームとしての輪が出来上がり、犯罪撲滅運動でのバックでの演奏、定期演奏会での圧巻のパフォーマンスになっていったのだと思います。実際に役者陣も演奏できるレベルまでの上達をしているというのもあり、役者陣の努力が凄まじいです。娘とのセッションのシーンもとても好きで、ゴリゴリにロックを掻き鳴らしながら、両者にあった溝を少しだけ埋めたのも憎い演出だなーと思いました。見上愛さんは実際に演奏されているのも凄いです。
・役者陣の熱演
役者陣の魂と魂がぶつかり合う、濃密な演技合戦も楽しめます。阿部寛さんの前半の堅物っぷりから後半にかけて打ち解けて見せる笑顔が素敵です。この作品でしかお目にかかれないキャラクターなのに愛おしさは今年トップクラスです。とにかく昔に固執していた刑事時代から今を知るようになり視界の広がった音楽隊の成瀬の変化にはグッと心掴まれました。
磯村勇斗さん、今年何本目の出演なんだ?と思いつつも成瀬に振り回される後輩刑事を熱演しています。今作のテーマの一つでもある"コンプライアンス"の存在意義にしっかり言及していたキャラでもあり、ただ単に憎い人物を貶めるものだけではないという新しい価値観をくれた坂本もとい監督の発想には頭が上がりません。
清野菜々さんや高杉真宙さんはじめ実力派が集合した作品の演技に隙なんてありません。悲哀に満ちた表情も嬉々とした表情も全て美しいです。憎まれ役の刑事たちも本当に嫌なやつだったのもまた良いです。
悪かった点
・警察描写が案の定杜撰かつ適当
邦画にありがちな問題なのでツッコむのも野暮なんですが、いくらなんでも警察が無能すぎやしないか?と思いました。この無能さは割と久々でした。基本的に捜査一課が上から目線(成瀬は上からというか傲慢だった)なだけで、何か捜査に進展があったとかそういうのが無くて、最終的には音楽隊の演奏を楽しみにしていたお婆ちゃんが襲われて殺されているところまでいっているので、これは偉そうな態度とっちゃダメだろう…と思ってしまいました。結果的に成瀬の意見が正しかったのですが、上の人間も少しは耳を傾けたら良かったのにな…。
・最後の逮捕シーン
大人になっても成長するという面が強かった人間ドラマの部分とはうって変わって、アポ強盗事件が後半になって捲るように回収されていきますが、正直必要だったかなーと思うくらいトンチキでした。まぁ前半の成瀬の現状を説明するためには必要だったと思うのでこの回収は致し方なしといったところなんですが、犯人の爺ちゃん強すぎじゃないか?と思うくらい強かったです。杖で吹っ飛ばして、投げ飛ばして、椅子でぶん殴ったりと無双状態。最後も若い成人男性3人に取り囲まれてもなお抵抗しようとする姿はややコメディにも思えてしまったのが残念です。黒幕だというのはすぐ分かったのですが、いかんせん動機やらの描写が無いのも物語に歪みを生んでいるように思えました。終盤のバス誘導も序盤のセリフ回収とはいえどねぇ…。ぶっ飛んでるなぁと。
要所要所にツッコミどころが構えていますが、人間ドラマとしてはとても面白く感動できるものに仕上がっており、これをオリジナル脚本で仕上げた内田監督天晴れです。髭男の主題歌もそっと背中を押してくれるようなサウンドと歌でほっこりできました。こういうオリジナル作品もっと増えてほしいなと思いつつ、また実写映画たちの渦に帰ります泣
鑑賞日 9/15
鑑賞時間 10:00〜12:10
座席 C-19