「警察音楽隊を侮るなかれ」異動辞令は音楽隊! 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)
警察音楽隊を侮るなかれ
犯罪撲滅のために人生を捧げてきた鬼刑事が、その熱意ゆえに周囲と折り合いを付けられず、挙句、辞令をもらった先が警察音楽隊だった!?そこまでの展開も、それからのアレコレも、ある程度想定内に進む物語を、細部に気持ちがこもった内田英治(監督&脚本)の構成力で見せていく。後押しするのは、もはや、武骨者が持ち役となった阿部寛の熱演だ。
急いで人生を生きようとすると決して見えてこない、組織の隅っこや社会の盲点が、主人公の目を通して浮かび上がってくるスローライフのすすめ。内田監督をはじめとする『ミッドナイトスワン』チームが、またしてもオリジナルの強みを示してくれた。今の日本に必要なのは、こんな優しい視点なのかもしれない。
そして、警察音楽隊を侮るなかれ。筆者は偶然、昨年9月に88歳で亡くなったフランスの国民的名優、ジャン=ポール・ベルモンドの国葬で、棺が担がれて行く際に、フランス軍楽隊がベルモンドの代表作『プロフェッショナル』のテーマを演奏し始めた途端、葬儀に列席していたVIPや一般ファンが号泣する様子を見ていたので、この設定がリアルに響いたのだった。
コメントする